俺にはなにもないことを、こいつはわかってるのだろうか。

この世には二種類の人間がいる。
一つ目は、普通に生きていける人間。
もう一つ目は、普通には生きていけない人間。
後者である才は、小学校からの付き合いがある宝に養われていた。

宝はいわゆる天才で、才の唯一の取り柄だったものすら奪っていく。
宝が目の前にある限り、才の劣等感は続いていく。
それなのに、宝は才に近づいてくる。
才はすごいと、友達だと、嫌味なく、無遠慮に彼の心へ踏み入ってくる。
才に理解ができないほど献身的な宝。それは友情なのか、それとも…

「宝に勝とう」

自分を助け、自分を傷つける宝。
この息苦しさを打破するため、才は決意する。
果たして、才は宝に勝てるのか。

才に理解されないほど恵まれた宝にも、歴史があった。
一般的に受け入れられる正解しか出せない宝は、多くの人に認められながら、埋められないなにかがあった。それを埋めるのが、才だった。
罪悪と贖罪と崇敬と嫉妬。
二つの視点が交互し、最後にはどこへたどり着くのか。

その他のおすすめレビュー

肥前ロンズさんの他のおすすめレビュー2,881