現実と幻想の狭間で紡がれる物書きの執念と書き物の宿命が切ない耽美な世界

現実を舞台にした幻想譚——と一言でまとめるには余りある、美しく儚く残酷な世界に冒頭の一節から惹き込まれました。

形あるものは、いつか崩れて無くなるものであり、
誰かの思惑で強制的に歪められ、喪われていくものであり、
それは古今東西繰り返されてきた、どうしようもない宿命だけれど、

そうなると、それに抗うように、どんな形にしても後世に残そうとする反発運動も自然発生するわけで、それが書物以外の形をとることもある——という、不思議な世界が広がっています。

声なきものが声を発すると、きっとこんな感じなんだろうな……と、すんなり飲み込めてしまう作者さまの筆致と構成にも脱帽です。
舞台設定も秀逸です。何だろう、この「この土地なら普通にありそう」と思ってしまう説得力は……(笑)

読み終えて、これが一万文字以内の世界だったんだ……と、二度驚きます。

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