デート何それおいしいの
「青春を教える? どうやってですか。そもそも青春の定義すら曖昧なものじゃないですか」
俺は桐原先輩の突然の発言に思わずそう否定的な言葉を溢してしまう。
「私には、何が青春なのかわからないんだ。定義もクソもないんだ」
確かに、何もわからなければ定義なんてしっちゃことないかと勝手に一人で納得しつつ、話に戻る。
「それで、どうして俺なんです? 別に友達とかじゃ駄目だったんですか?」
俺は最初から抱いていた疑問を訪ねる。そもそも俺である必要性がないのだ。聞きたいのなら同性の友人に頼めばいいわけだし、異性だとしても俺である必要性はこれぽっちもない。
「うーんなんかさ、そういう話するようなキャラに見えるかな? 教室って一種の国なわけで人間関係の少しで揺らぎたくないんだよね」
桐原先輩は右手の人差し指でくるくると髪の毛を巻ながらそう言った。くるくると巻いてはサラリと靡く髪に自然と目がいってしまう。
「まぁ、学生にとってはほとんどを過ごす場所ですからね」
「そこでたまたまDM送ってきた君に手伝ってもらおうと思ったわけ」
「いや、送ったの俺じゃないですし、何か巻き込まれてるだけですよ」
俺にそんなDMを送った記憶もないわけで、俺は完全にとばっちりを受けているわけだ。
「でも勝人くんはこんなことをされる身に覚えがないんだろう? なら協力するべきだと思うよ。協力してくれたら私も偽物探しを手伝ってあげるからね」
確かにこの条件だったらお互いにメリットがある。だけどこんな陰キャに青春なんてあると思うか?
「じゃあ早速何だが今週の日曜日は空いているかい?」
「日曜日ですか? まぁ一応は」
「そっか、それならよかったよ」
ニやりとした桐原先輩の笑顔に鳥肌がたつ。嫌な予感がする。
「その日私とデートしよう」
「な、なに言ってるんですか⁉」
「いや、そのままの意味だよ? 青春といえばデートかなって思ってさ。とりあえずそんな感じの予定にしてみた」
「してみたじゃないんですよ! デートなんて俺したことないですよ?」
俺は熱が入りすぎて思わず立ち上がって桐原先輩に抗議する。
「とりあえず、デートは確定だからよろしく」
「ちょっと、桐原先輩、待ってくださいよ」
桐原先輩はそう言い残して理科準備室から出ていった。俺はそれを追いかける形で理科準備室から足を踏み出す。
教室のホ起こりはふわりと舞い上がり、太陽の光は窓からほんの少しだけ教室を照らすばかりだった。
あれ? 俺、時間と場所聞いてないぞ?
青は道連れ世は情け 筒木きつつき @ryunesu
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