教えて青春、導くフォーチュン
「少し話せるかな?」
後ろから聞こえてきた声に俺は振り返る。
「ちょっといい?」
中庭を通り抜けた風で揺れる美しい容姿で綺麗な銀髪の彼女は先ほどまでとは違いどこか神妙な顔つきをしていた。
「いいですけど、他に何か用事ありますか?」
「いいからついて来て」
彼女は俺に言い残して購買とは反対、つまり俺が来た校舎へと進んで行く。
俺まだお昼食べてないんですけど……
俺の心の声が届くわけもなく、俺は彼女についていくことしかできなかった。
「ここなら誰も来ないから」
校舎の三階。一番端の教室の扉を彼女が開けた。
これ勝手に入っても大丈夫なのだろうか?
俺は少しの疑問とともに失礼しますと一応挨拶をして教室の中へと入る。
教室の中は少し湿っぽく、長い間使われた形跡はなかった。壁際には棚がずらっと並んでおり、昔使っていたであろう資料や人体模型が置かれている。しかしそれらのものはみな埃をかぶっていた。
「今、ここ入っていいのかなとか思ったでしょ?」
俺は自分の心が読まれているのではないかとビクッと体を震わせる。
それが分かるなら購買行きたいのも読み取ってくれよ。
心でそんなことを思っていると、彼女は右手で口元を隠しながらクスっと笑う。
「反応面白いね。ここは昔の理科準備室で今はいらないものの物置になってる場所だから誰も近づこうなんて思わないよ」
「そんな教室があったんですね。それで、話って何ですか?」
今までこの部屋が安全なのかどうかばかり気にしていたが本題は何も解決していない。
「まぁ座って話そうよ」
彼女は教室の真ん中にある椅子を二つ持ってくると、俺の前に一つ置いた。
「あ、とりあえず名前教えた方がいい? 私は名前知ってるけど勝人くんは初見だもんね」
先輩も初見だろ! と突っ込みたくなる気持ちをグッと抑えへりくだるように俺は言葉を溢す。
「そうですね。その方が話しやすいと思います」
「だよね。私の名前は桐原優里亜。まぁ好きなように呼んでよ」
年上の美人な先輩と、誰もいなき教室で二人きり。この状況に俺はドキドキしっぱなしだった。
「わ、わかりました。じゃあ桐原先輩って呼びますね」
「おっけー。まぁ最初から名前呼びは無理だよね」
桐原先輩はニッと笑いながら意地悪そうにそう言った。
この人、もしかして俺のこと笑うために呼んだ? いやいやそんなはずない。だってあの時の顔はもっと真剣で、困ってる顔をしていたんだし。
「桐原先輩、とりあえず本題に行きましょうよ」
「そうだね。じゃあ単刀直入に言うよ。私に青春を教えてほしいの、勝人くん」
真剣な顔でそう言った桐原先輩の綺麗な銀髪は外から差し込む太陽でキラキラと輝いていた。
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