チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【57】最後まで生き抜いてやる【なずみのホラー便 第154弾】

なずみ智子

最後まで生き抜いてやる

(ご注意!)

 本問題には、前問の「チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【56】火で死ぬ、水で死ぬ【なずみのホラー便 第153弾】」のネタバレが含まれています。

https://kakuyomu.jp/works/16817330668318829105



【問題文】

 

 十数年前にネットでチラッと見たオカルト系の儀式を唐突に思い出した1人の男性は、暇つぶしにそれを試してみることにしました。

 ある手順を踏んでいけば、死神から「漢字一文字」が書かれた紙を渡されるとのことです。

 手順の記憶は曖昧でしたが、儀式は成功し、まるで死神のテンプレのような姿をした”いかにも”な死神が現れ、ゴシック体で「漢字一文字」が書かれている紙を渡されました。

 紙には「日」と書かれていました。


 「日」の意味が分からなかった男性は、死神に直接聞いてみました。

 死神は「ああ、それな。俺を呼び出した他の奴らも自己完結せずに、お前みたいにはっきり聞いてくれりゃあいいのによ。誰も教えないなんて言ってねえのに。ちなみに、その意味は……」と、丁寧に教えてくれました。

 意味を知った男性は、心が軽くなりました。

 

 無論、死に対する恐怖が皆無になったわけではありません。

 ですが、もう必要以上に怯えなくていいのだと思いました。

 それに、今の年齢(49歳)から考えると、しばらくは大丈夫だろうとも。

 さて、この男性の心が軽くなったのはなぜでしょうか?



【質問と解答】


キクちゃん : これは前問の続きというより、番外編でしょうかね? この男性の場合は日曜日なんですね。死神に”自分がこの世の者ではなくなる曜日”を知らされたのに、なぜ心が軽くなっているのか……。前問のD男さんなんて、恐怖のあまり自ら命を絶ってしまったのというのに…………もしかして、この男性は超ポジティブ思考で、「俺は日曜日に死んでしまうのか……でも、人間は誰しも死ぬものだし、死ぬことは怖いが、逆に考えると日曜日以外の曜日はいたずらに死に怯える必要はないんだな」と悟りを開いたのではないでしょうか? 前問のD男さんは1の恐怖に6の安堵を覆いつくされてしまった。しかし、この男性は6の安堵が1の恐怖に勝ったのではないかと?


チエコ先生 : NO。何か他にひっかかるところはない?


キクちゃん : ……他にひっかかるところと言えば、「それに、今の年齢(49歳)から考えると、しばらくは大丈夫だろうとも。」ですかね。人生80年どころか、人生100年とも言われている現代では折り返し地点前ですし、身体に顕著な不調が見られない場合は、しばらくは大丈夫だと思うのは分かります。でも、いくら健康体でも事故や事件などは、いつ誰の身に降りかかるかなんて分からないのに、それらのことを心配している描写が全くないですね。


チエコ先生 : いい目の付け所よ、キクちゃん。この男性はね、普通に道を歩くことができる私たちと比較して、事件や事故に遭遇する確率が極めて低い環境に置かれているの。男性がいる場所はどこだと思う?


キクちゃん : 事件や事故に遭遇する確率が極めて低い環境? やんごとなき生まれで常に誰かに守られているとか、自らどこかにずっと閉じこもり続けているとか、はたまた拘束されているとか、そうでない限り……。 ん? 拘束? ああっ! まさか……この男性がいる場所は、拘置所ですか?


チエコ先生 : YES。


キクちゃん : 男性は……いえ、この男は死刑の執行を待つ死刑囚ですか?


チエコ先生 : YES。


キクちゃん : 確か、土日祝日、そして年末の29日から年始の3日までは死刑を執行されないことが法律で決まっていましたよね。よって、この男は自分が日曜日に死ぬことを知らされたことで、自分は死刑囚であるけれども、その死刑が執行されることはないと知ったのですか。獄中死するのだとしても、もう毎朝毎朝、刑務官の足音に怯えなくていいのだと思って、男の心は軽くなってきたのですね?


チエコ先生 : YES。正解よ。死刑囚として拘置されているとはいえ、結局のところ、この男は最後まで生き抜いてしまう……すなわち逃げ切ることになるのよ。



(完)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【57】最後まで生き抜いてやる【なずみのホラー便 第154弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ