鬼のくせに……、人のくせに……

鬼といえば、無差別に人間を襲う恐ろしいイメージ。おとぎ話では、たいてい退治されてしまう存在です。
反対に、人間はどうでしょう。他国を侵略したり紛争を巻き起こしたりして、この世では暴力が絶えません。仲間同士ですら憎み合う人間を、鬼と言わずしてなんと呼ぶのでしょうか。

この物語では、そんな鬼の娘・さくらと村人の娘・たき子が出会い心を通わせていきます。
しかし、当時の村では、開発のために都会から富豪がやってきて、内輪揉めが起こり一触即発の状態でした。
そうしてある日、事件は起こってしまいます——。

鬼と人との境界線を考えさせられながらも、ミステリアスなストーリーは魅力的。感情的になりすぎない淡々とした言葉運びで、その世界線に一気に引き込まれます。

非常に感慨深い良作です、ぜひご一読ください。

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