第5話有段者の集まり
蛸ん壺は、一見店内に入り込むのに、勇気が必要かと思えば、そんな事はない。初めての人でも、大将を始め、常連客が受け入れてくれる。
皆んな、ビール、ウイスキー、焼酎、チューハイ、ソフトドリンクなど、好き勝手に飲んでいる。
僕は酒飲みの有段者と自覚している。5段だ。しかし、周りの常連客は8段以上でタイトルホルダー。
皆勤賞の名人もビールを飲んでいるが、たまに、僕のグラスに注いで頂ける。
5段でも、デブでサングラスと言うタイトルを持っている。
ここは、泥水するまで飲む所では無い。
酒を飲み、たこ焼きを食べながら、会話する社交の場所である。
この前、サガリ(牛の横隔膜)の話しになったので、僕が、
「サガリって言ったら、石田屋ですね」
と言うと、
「うわぁ~、さすが!良くご存知で」
と、名人が言う。周りが石田屋ってどこだ?と名人に尋ねるので、
「金山の高架下だ!」
と、教えたが周りは首を傾げている。
有段者になると、牛肉、豚肉、鶏肉の部位ごとに専門の店を知っている。
この酒道では、いかに安く、美味しくて、雰囲気の良い店をどれだけ知っているかが、問われるのだ。
大将は一息つくと、喫煙して名人からビールを注いでもらって飲んでいる。
たまに、常連客から瓶ビール1本もらえる事がある。大変有難く、恥ずかしいが、僕は厚顔無恥だから美味しく頂く。
この前、若い女の子2人と男が入店してきた。女の子は、20代だろう。近くの店で、コンパニオンとして仕事して、30分で出て行った。
だが、そこが有段者。
常連客は、静かに飲んだ。普通なら、お年寄りは若い女の子見たら、やたらめったら話し掛ける人がが多いが、蛸ん壺の常連客は常識的な人が多い。たまには、イレギュラーな人もいるが。
今度は千茶を蛸ん壺に連れて行くのが楽しみ。
名人の隣に座らせようか?
名人は、会長さんだからきっと、気に入って瓶ビールを飲ます事を予想している。
僕も、たまには常連客に振る舞いたいが、最年少者がそう言う事をしたら、失礼だと思い大将だけにはビールを注いでいる。
兎に角、常連客が数年前とガラリと変わる。
多分、お空へ逝ってしまったのであろう。
しかし、今の常連客はまだまだ、現役。
有段者に恐れず、蛸ん壺の店内で飲んでもらいたい。
大学生でも、来るんだから、名古屋市在住の方、名古屋市へ用事のある方、蛸ん壺へどうぞ。
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