あらすじ(応募用)

(※各エピソードの結末を含みます)



「泥を這い出て淵に浮く」あらすじ


 日暮れ頃、駅や通りの暗い隙間に向かって念じていると、引き摺り込まれて異界の神社へ連れて行かれるらしい。怪しげな屋台が並び、薬屋の男がお椀を差し出す。それを飲むと特殊な能力や効果が得られるが、必ず代償を要求されるという。

 学校でこの噂を聞いた少女は、さっそくこれを試す。異界の神社を訪れ、薬屋の男に促されて、片思い相手の先輩が自分を気に掛けてくれるように願う。代償として母親からの関心を失う。

 その他、様々な望みを持つ者が訪れ、代償と引き換えに願いを成就する。

 事業の資金繰りに困った男は、大金の代わりに過去の思い出を失う。

 職場の人間関係に悩む女は、自分をいじめるお局の機嫌を事前に知りたいと願うが、代償として自分の感情がわからなくなる。お局は退職し、今度は女自身が新人を虐める側に回る。

 超能力を得たい中学生の少年は、周囲のクラスメート達への興味を失い、皆と違う特別な人間になりたいという欲求の動機を失う。

 バイオリンの発表会でライバルに勝ちたいと願う若い女は、音楽の良さを感じる耳を失う。同じ教室の生徒が急に「音楽の良さがわからなくなった」と言って辞めたと聞き、自分と同じような願い事をして代償を払った者が他にもいるのではないかと疑う。

 出世の代わりに自分の第一子の命を支払うと約束した男は、その後生まれた息子を溺愛して怯え暮らす。そのせいで家族は崩壊していく。ある日、昔付き合った女が現れて、学生の頃あなたの子供を妊娠したが堕した、と打ち明けられる。

 SNSで自分を盛って語る癖のある男は、オフ会で会う予定の後輩に幻滅されないかと恐れ、上手く取り繕うことを望む。男は無事に切り抜けるが、後輩が会いたがっていた相手は本当に「自分」だったのかと悩み続ける。

 何でも美味しく感じる舌を望んだ女は、そのせいで腐ったものや体質に合わないものを間違って口にするようになり、思わぬ不便を感じ始める。子供ができたのを機に、舌を元に戻してほしいと願うが、代償は教えてもらえない。女は自分の子供の味覚が代償として取られたのではないかと不安になる。

 二重整形に憧れる大学生は、顔を変える代償に性格が変わってしまう。その後、気の合う恋人ができて平穏を得るが、もし以前の性格のままだったらと何度も考えることになる。 

 最終章は、動画配信でそこそこの実績を上げる三人組。ある廃墟に撮影に出かけるが、そこで怪異に襲われる。なんとか逃げのびた先で暗い部屋に追い込まれ、「大きな願い事をしろ」と迫られる。三人はそれぞれ、活動を続けること、再生数を得ること、寿命を延ばすことを望み、代償として互いのアカウント名を忘れる。

 薬屋の店番は、三人の若者と一人の少年が交代で務めている。彼らは客の支払った代償を「黒い壺」に集め、ある女性を甦らせる反魂の儀式の代償として使おうとしている。彼らはこの儀式を何度も繰り返しているが、いつも今一歩のところで失敗してしまう。今回も儀式は上手くいかず、一人が自分の身を捧げて儀式を完遂しようとするが、他の仲間に止められる。四人は改めて人々の願いの代償を集め直すことを決意する。

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泥を這い出て淵に浮く 森戸 麻子 @m3m3sum

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