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近況や創作メモ他

前回の近況ノートで無職になったと言ったきりになってましたが、無事に次の職は得られたようです。新しい職場で一番驚いたことは、勤続20年とか30年とかの大ベテランが普通にゴロゴロいて(言い方…)、あ、私も今後(クビにされない限りは)ずっとここで働けるんだ、働いてていいんだなと実感できたことです。ちょっとまあ以前の仕事のことをごちゃごちゃ言うのも良くないのですが、自分が社会に出て以来、自分よりずっと良い待遇で雇われた人が自分より後から来て自分より先に辞めてくのが常態みたいな、そういう不安定な職場しか見たことがなかったので。もちろん、上にベテランがいすぎない職場は、それはそれである種のチャンスや気楽さがあるんで、一長一短ですが。


創作の近況。
「泥を這い出て淵に浮く」が完結です。もともとカクヨムコンのホラー部門に向けて書いていて、案の定間に合わなかったので、その後はグダグダでしたがなんとか終わりました。

この作品は短編のオムニバスで、とにかくコンテストに間に合うようになるべく早く書けるものを、という不純な動機で内容を決めたので(そして結局間に合わなかったというオチ)、数打ちゃ当たる方式で次々と案を出してボツになったものが沢山あります。


以下、メモ書きに残っていたボツ案。ボツなので適当です。(しかし実は、採用された案のメモも大体この程度です。)


・宵の籠絡(案)
営業ノルマに追われている主人公が、退勤時間までに契約を一本取りたいと奮闘する。または、店の男Aが客を上手く捕まえて、Bにコツを解説する。

・差異の攻略(案)
料理人。風邪をひかない体質になりたい。花粉症も困る。味覚や嗅覚が鈍る日が多いと、仕事にならない。
代償は味覚。味のバランスはわかるが、美味しいという感動はなくなる。
それでも、感情を排して味の調整ができることはシェフとしては良い能力なのかもって。
同じ店で修行していた先輩が急に出世して表彰されたことを知る。その人も何かの代償を払っていた?

・差異の省略(案)
若者が、移動を面倒くさがって、目的地まで瞬間移動したがる。
女の子と付き合うが、面倒くさがって、デート先が毎回勝手に決まるようにしたい。
服を決めるのが面倒。だから毎朝勝手に服装が決まってほしい。
本が早く読めるようになりたい。映画や音楽を早送りで味わいたい。

・無味の供食(案)
口にするもの全てが美味しく感じられるようにしてもらった男。
最後は腐ったものとか毒を間違って食べて死ぬ
即オチ二コマじゃねーか!(というセルフツッコミが書き留められていた)

・タイトルなし
シークレットVIPが待っている恐ろしい飲み会に誘われる話(時事ネタ…)

・価値の収束(案)
整形中毒に陥っている若い女。どんな代償も払うので顔を美しくしたいという望みを告げると、相手は「自分が幸せになるべきだと確信している者には売れない」と拒否。セカンドオピニオンを受けるように助言して帰らせる。

・タイトル案色々
仮の充足
価値の隷属
瑕疵の収束

ノリで最初の2話分のタイトルの響きを揃えてしまったら、その後すぐネタ切れになって苦しんでいた。


作品タイトルについて。
最近読んでいた漫画で「地獄くらやみ花もなき」「呪い刻むは我にあり」など、七五調のタイトルが好きだったので、自分もやりたいということになりました。
それと「淵」か「沈む」という言葉を入れたかったんで検索を(既存の作品と被ってないかの確認のため)かけていたところ、「金を泥に捨て玉を淵に沈む」という言葉がヒットしました。財産など野山に捨て、世俗の欲望に捉われない人間になれみたいな、現代で言うところの「断捨離のすすめ」みたいな文脈で使われた言葉のようですが、そうは言っても人間の欲はそう簡単に消えないよねということで、捨てたはずの欲望がまた湧き出て戻ってくるイメージでこのタイトルをつけました。


参考にした本や影響を受けた作品

意外と一番影響を受けたような気がするのは「ばけもの夜話づくし」という漫画で、色んな業を抱えた人間や妖怪が異界の宿屋に引き寄せられ、謎のもてなしなのか嫌がらせなのかよくわからない接待を受ける(?)という、幻想的な怪談シリーズです。私はいつも夜中に寝ぼけながらこれを読んでいるので、いまだに話の内容がさっぱりわかってないのですが。悠久の時を生きるあやかしの視点で描かれる世の無常や不条理のシーンが多く、善悪や道理を超えたなにものかを感じられる作品です。

あと、

「異界と日本人」小松和彦
「怪談文芸ハンドブック」東雅夫

これはどちらも、主に古典とか近現代の名作の中のホラー系作品の位置付けと概要を紹介してくれる本で、時代や国を跨いで色んな「作例」を確認できる便利さもあり、またどの話も要約だけでもかなり面白いので、今後読みたい名作が見つかる優秀なガイドでもあります。「怪談文芸〜」のほうはなかなか文章の言い回しが難しくて、私には大変でしたが。難しい日本語久しぶりに読んだね……(頭のわるいかんそう)

元はといえば、今年のカクヨムコンで木古おうみさんが特別審査員をされると知り、いつも自分が読んでいる作家さんですので、じゃあとりあえず出しておかないとっていう(結果間に合わなかったというオチの)ことで始めたので、木古さんが近況ノートやTwitter(X)で「応募しようとする人に薦める参考文献」として紹介されていた本をちょっとずつ読みながら書いていました。中でも上記の2冊はすごく面白かったです。各時代、各国の人々が何に興味を持ち、何を恐れていたかなど色んな例が見られ、その中で普遍的に繰り返される鉄板ネタなどもあり……自分の書いた中では「怪の消息」出世と引き換えに我が子を捧げると約束してしまう父親、という話は古典というか昔話によくあるパターンをそのまま持ってきました。あとは死者を甦らせる反魂の儀式の怪談とか。古典の中でそれがどう描かれているのかは、興味深く読みました。実際には、意外と大したことは書いてない。儀式そのものの手順は、誰にも計り知れない秘密ということで。まあだから、自由に好きなこと書いていいんだなと、逆に気が楽になりました。


最後のエピソード、三人の配信者の話について。
単にチャラいTikTokerが俺たち不謹慎上等だぜ〜と意気込んで因習村(最近流行ってる言葉)に突撃していき、その後お化けに追われる流れを考えていましたが、実際に書こうとするとわりと変な、書きづらい構造だなと気付いてしまった。因習の残る村、怪物、問題を抱える主人公グループ、とそれぞれ関連性のあまりない問題が乱立してて、何の話なのかよくわからない。それで書きながら色々削ったり変更したところ、フリとオチが噛み合ってない妙なところが多い話になりました。
去年観た映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が面白かったんで、あれを観た時はすごくそういう金田一耕助的なジャンルものの王道で典型的なストーリーだなと感じたんですが、自分で書こうとするとこれかなり難しくね? 村のヤバさ、怪物のヤバさ、主人公の元々抱える問題のヤバさ、すべてをちょうど良く組み合わせて盛り上げながら鬼太郎誕生にまつわる様々なキャラクター達の因縁も盛り込んだあの映画のプロットは超優秀だったのでは? と、一年経ってから気付きました。まだ観ていない人は今すぐに何らかの配信サービスなどで探して観てください。
(関係ない映画の宣伝をして終わる)

2件のコメント

  • メモ、さりげなくR.P.A.で使えそうなネタがありますね……!
  • しゅげんじゃさん
    ありがとうございます。
    確かに、このシリーズはR.P.A.とちょっと似たところがあって、どっちにも使えそうな話が多いんですよね。
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