第9話 ヤバい怪異
新田一がお風呂に行った。
そしてぼくは、古民家で1人になった。
畳の匂い。お線香の匂い。
使い古された座布団にぼくは座っていた。
カチカチ、と時計の音がする。
辺りを見渡す。
ココはどこだ?
ぼくは何でココにいる?
今日、ぼくは何をしていた?
ぼくの記憶から、何かがスッポリと抜け落ちていた。
ぼくは今日、何かを探していた。
何を探していたのかもわからない。
それが見つかったのかもわからない。
そして気づいた時には知らない人の家にいるのだ。
ココは誰の家だ?
なんでぼくはココにいる?
自分が転生者であることを思い出す。
ココはラノベの世界である。
そして、この世界には怪異というものが存在する。
貧乏揺すりみたいに膝がガクガクと震えた。ココから逃げなくちゃ、と思った。
ぼくは何かの怪異に襲われている。
古民家の怪異は1巻でも登場した。家から出ることができない怪異である。
その類の怪異だろうか?
恐怖で立ち上がる事も出来ずに、四つん這いになって居間を出た。
玄関に向かおう、と思った。
だけどシャワーの音がした。
もしかしてぼく以外にもココに人がいるのか?
この家から出たい。
だけど浴室も調べたい。
自分以外に人がいるなら助け出さなくちゃいけないのだ。
ぼくは強くはないけど、多少の正義感はあった。
壁に体重をかけて震える膝で立ち上がった。
そして恐る恐るシャワーの音がする方へ。
脱衣所には女子高生の制服が綺麗に畳まれて置かれていた。
大きなブラジャーとパンツ。ちなみに白色である。
「誰かいるのか?」とぼくは震えながら尋ねた。
「いたら返事をしてくれ」
シャワーの音が止まった。
返事は無い。
「おい、誰もいないのか?」
恐怖で叫んでしまった。
浴室も見ておこうと思って、スライド式の扉に手をかけた。
恐怖で手を震わせながら扉をスライドさせた。
浴室の中から蒸気がブワッと溢れ出す。
浴室には誰もいない。
でも誰かの声が聞こえた。
そんな気がして浴槽を見た。
そこには裸で胸と下半身を手で隠した女性がいた。
その姿を見た時に新田一の事を思い出して膝から崩れた。
「ごめん、新田さんの事を完全に忘れていた」とぼくが言う。
「うん」と彼女が浴槽で頷く。
新田さんの顔は真っ赤だった。
「それより、いつまで和田君はそこにいるのかな?」と彼女が顔を赤くして言った。
ごめん、とぼくは慌てて浴室から出てスライド式の扉を閉めた。
彼女の裸を見た事を意識した。ぼくは何てことをしてしまったんだ。
「ごめん」と浴室に向かって、もう一度謝った。
透明人間の怪異。
彼女はヤバい怪異に取り憑かれている。
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