バイアスへの警笛

Doll House――読み終えてからタイトルに戻ると、印象が反転する。そんなお手本のような本編。

前半にちりばめられたうっとりするほどのにこやかなシーン、マドモアゼル・ロッピィにジョアンヌ、ティムにシナモンたっぷりのアップルパイ。

おしゃれでおしゃまな様子の小気味よいエッセンスがたっぷりしみこまされた前編を終えると、突如現れる違和感の塊「キヌコ」に「ヤスケ」

要素の使い方が巧みですね。一粒で二度おいしい。うまくまとまった短編!

ホラー味は、読了後にぴとぴとと滲みこんできます。徐々に。

服につくとなかなか消えない1滴のバニラエッセンスのように……。

「バイアスへの警笛」の意味は、ぜひお読みになってから感じていただけたらと思います。

どの作品にも、きっちり軸の通った作者の想いが感じ取れるため、さらりと美しくまとまっていても、余韻が残ります。

お薦めです。