文学が持つ真の力を思い出させてくれる、生と死を超えた絆が紡ぐ希望の物語

本作品は、人間の深い悲しみと希望、そして生と死を超えた絆を描き出した、素晴らしい作品である。

ゆきという女性幽霊と、生きる意味を見出せずにいたアリサとの出会い、そして彼女たちが共に目標を成し遂げる奇跡の物語だ。

この物語の中には、生と死の境界を越えた、深い愛と絆の物語が織り込まれている。

ゆきの未完成の小説を完成させようとするアリサの奮闘は、読者にとっても深い感動を与える。それは、単なる幽霊物語やファンタジーに留まらず、一人の人間が他人の夢を叶えるために何ができるかを示している。

特筆すべきは、作者がこの物語を通じて提示する「書くこと」の力と、「読むこと」の重要性である。

ゆきが書いた小説が人々に与える影響、そして、それを読んだアリサの人生に大きな変化をもたらす様子は、文学が持つ可能性の一端を示している。

また、この物語の最大の魅力は、ゆきの小説が書籍化され、その収益が交通遺児奨学金の会に寄付されるという結末にある。これは、物語内でのゆきの遺志が現実世界においても果たされるという、フィクションと現実の境界を曖昧にする素晴らしい試みである。

文学好き人にとって一読する価値がある作品といえよう。

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