幽霊のゴーストライター

まるっこ

プロローグ


 夕方の大型書店は大勢の人で賑わっていた。


 不意に震え始めた口元を隠すために、アリサは口を手で覆う。


 ゆき、やったじゃん。本になってるよ、本屋に並んでんだよ。あんたの書いた小説が――。

 

 ひと目でキャバ嬢か何か水商売風とわかるアリサのそんな様子が気になるのか、隣に立つOL風の女性がチラリと目をやった後、アリサが見つめていた平積みになっている本を手に取り、レジに向かった。


 ほら! ゆき。あの人買ってくれるんだよ。ゆきが書いた小説をお金出して買ってくれるんだよ。


 頭の中に、ゆきとの出会いの日々が蘇る―――。

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