第1話

 1年前―――。


 部屋にたどり着き、ソファーを兼ねるローベッドにどかっと座り、アリサは悪態をついた。


 ったく、どいつもこいつも安酒ばっか頼みやがって、デブの山岸は来るって言ってて来ないし……。まあ、そんな事いつもの事だけどさ。


 メイクを落とさなければと思うが、気力がない。

 

 殺風景な部屋をみながら思う。

 綺麗になるぞと思ってながら、ブスになる事ばっかしてるな……

 

 キャバ嬢でノシ上がっていつかは小綺麗な3LDK、いや一軒家なんて事を夢見て、田舎から東京に出てきたけど現実は厳しい。


 男をおだてて高い酒を飲ませ、バカ話に嬌声を上げる。隙あれば太ももや胸に伸びてくる男の手をそれとなく交わす。

 そうして稼ぐ金は、そう大したものでもない。


 危ないストーカーみたいな客も多い。つい最近もそんな客の一人から逃げるために引っ越して貯金が減った。少しでも安く抑えるために、決めたのは築30年の1K6畳、しかも和室だ。

 

 それでも住めば都か。引っ越しから2週間ほどたち、この部屋にも慣れた。

 

 見栄をはってもしょうがない、誰かを呼ぶこともない。どうせキャバクラから帰ってきてドロのように寝て、出勤するためだけの寝床だとアリサは思う。


 インスタを目的もなく眺めてたが、まぶたが落ちてきた。

 寝るか――スマホをちゃぶ台の上に置き、そのまま横になった。


 どれくらい眠ったのか――爆睡型のアリサには珍しく突然眠りから醒め、目を開けた。

 目は壁の方に向いているのに、意識が背後のちゃぶ台の方に吸い寄せられる。


 なんだ……? なに……? 


 何かいる……確実に後ろに何かいる。



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