第2話

 強盗……強姦魔……? 相手に知られないように掛け布団の下で110番できないか? スマホはどこだ? だめだ……ちゃぶ台の上に置いたのを思い出し、息を詰める。


 このまま寝たふりで、やりすごすべきか騒ぐか迷っていると、


 ―― あ、あの……


 という声が響いた。女の声だ。 

 いや、声というか頭の中に直接響いてくる。

 

 ヒャッ! と叫び声が出そうになったのをアリサは堪える。


 まじか、まじか……。

 女がいるよ部屋の中に、私のすぐうしろに。

 ていうか、どうやって入ったんだよ……。


 小学校6年まで空手をやってたから、女同士での殴り合いなら自信がある。振り向きざまに鼻に頭突きを食らわして、その勢いのまま馬乗りでタコ殴りにしてやろうか?


 アリサがそんな事を考えているところに、また頭の中に声が響いてくる。


―― あの、あやしいものではありません。


 いや、あやしいだろ……この上なく……。


 でも、なぜか戦闘意欲は削がれた。


 ええい、なるようになれ! 意を決して勢いよく振り向いた―――。


 アリサの周りには決していない、おそろしいほどに地味な女が、ちゃぶ台の前で行儀よく正座していた。年の頃なら21歳のアリサと同じぐらいか……。


 驚きのあまり声をあんぐり開けたまま声が出ず、アリサはひたすらその女を観察した。


 何か、違和感がある。やがて、その違和感の正体に気づいた。体の輪郭がはっきりとせず全体的に透けている。


 世にいう幽霊なのか……。



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