「敢えて混ぜないマリアージュ。」
- ★★★ Excellent!!!
「はちカフェのむ?」
こぽこぽとした音やかおり、ほんのりした湯気、泡立つカフェオレ、そんな素敵な喫茶ゆずのきで働く蒼からシーンがはじまります。
蜂蜜は、コーヒーには溶けづらいのだよな、おいしいのだけれど。そんなことを思いながら読み進めました。
4人の人物の視点が交差します。そこへ浮かびあがる、いくつかの出来事。
キャラクター造形、モチーフ運び、色彩感覚や音、どれをとっても秀逸です。溶けにくいと私に思わせたモチーフさえ、すべて巧みにマリアージュされていきます。
短い作品なので、構成がわかりづらく感じられるかも知れませんが、一本の映像作品として、ぜひ見てみたいと思わせる感性溢れる作品です。
ネタバレしたくないので詳しく書きませんが、モネの絵画で緑翠というと、オルセー美術館にある『睡蓮の池、緑のハーモニー』が浮かびます。
敢えて混ぜないマリアージュ、その瞳にうつる、僕たち全員のグリーン。
そしてぼくは、緑になる。
紙の本として、カバンに潜ませたい短編です。