シャリヤちゃん、東京を歩く

ペクテノ

シャリヤちゃん、東京を歩く

 「...あれが富士山っていう日本で一番高い山だ」

せんが、私が座っている窓側の席に少し寄りかかってきて、外を指さすと、そこには麓が青く、山頂は雪に覆われ白くなっている見事な山が見えた。

見え方的に凄く遠くにあるんだろうけど、はっきり大きく見えたそれは、日本一の名にふさわしい荘厳さを兼ね備えていた。


 今私達は、新幹線シンカンセンという列車に乗っている。

初めて見たときは、鳥のくちばしのような先頭車両の形にびっくりしたが、乗っているとあまりの速さに対する驚きの方が勝る。

連邦高速鉄道などもあっちにはあったが、それよりも速いだろうか。

 そう、私と翠は旅行のために大阪から東京に「トウカイドウシンカンセン?」という高速鉄道に乗って行っている。

 「まもなく、終点の東京です。中央線、山手線...」

車内に流れた日本語ともう一つの言語(翠に聞くとエイゴ?って言うらしい)のアナウンスは私達の東京観光の始まりを告げる。


 新幹線が止まり、ドアが開いた。

潜り抜けて、ホームに行く。

ものすごい人の多さだ、梅田に1人で行ったときも人はいっぱい居たけど、それと同じぐらいの人がいる。

 翠に導いてもらいながら、改札へと向かう。

屋内にも関わらずとんでもない広さで、迷ってしまいそうだ。

何列にも並んだ改札に切符を通してから出て、右に曲がる。

両端にはたくさん並んだお店、天井にはいっぱい書いてあって情報量の多い案内、大きな柱に描かれた広告、全てが新鮮だ。

早く抜け出したいと思いながらもこの光景を見ていたいとも思う。

ただ、この翠の背中を追いかけながら、歩く。


 そのまま真っ直ぐ歩くと、外が見えた。

マルノウチチュウオウグチ?という出口から行っているらしい。

 外に出ると、それは圧巻だった。

「すごいね、翠!」

 大きなターミナルに、真っ直ぐずっと続く大通り、両方に大きなビルが立っている。

空高くまで聳え立っているビルの姿に少し首を痛めかけた。

隣を見ると、翠まで息をのんで景色を見ている。

 そして、振り返るとレンガ造りの駅舎。

ビルに囲まれた中にあるちょっと古めかしい駅舎もまた良いアクセントだった。


 今から行くのはアキハバラという街らしい。

歩いて行ける距離だそうだから、景色を楽しみながら歩いてみる。

ターミナルを抜けて横を貫く道を歩く。

相変わらずたくさんの車だ、4車線もある道をぎゅうぎゅうに走る車たち。

歩道には白シャツを着た沢山の大人たち。

気をとられていると、人にぶつかってしまった。

「ゴ、ゴメンナサイ!」

「あっ、I’m sorry!」

ぶつかった人は、また聞きなじみのない言葉で謝った様子だった。

私が人にぶつかってしまったことに気づいた翠は心配した様子で怪我はないか、と聞いてきた。

梅田のときも同じことがあったような気がする。

全く、気を付けないといけないようね...


 道なりに歩いていくと、一つの川にかかる橋が見えた。

川幅よりも道幅のほうが広いのではないかと思うその橋を越えると、景色は一変した。

今までの地味な見た目のビルから、壁には大きな広告の動画が流れるスクリーン、赤や青などの派手な色の壁の色、どうやらここがアキハバラらしい。


 中央の大通りから少し歩いて、まず入ったのは「ラジオ会館」

どうやら、このお店は色々なグッズを取り扱っているそうだ。

エスカレーターに乗って各階層を見る。

凄く鮮明に作られた人形や可愛い女の子が描かれた絵画が売られていた。

中には翠が最近はまっているティーアールピージー?っていうゲームのルールブックやダイスも売られていた。

 そして、びっくりしたのは並んでいるものの種類の多さだ。

カードゲームや洋服、楽器だけじゃなく、挙句の果てには銃まで取り扱っている。

翠が言うには、本物の銃ではないらしく、サバゲー?というもので使うものらしい。

 色々商品を見ていると、どうやら翠が好きな作品のグッズがあったそうだ。

「あっ!これ、ずっと欲しかったんだよなぁ」

すぐにレジに向かって買っていた翠はとても嬉しそうな顔をしていた。

翠がそんなに好きなら、今度見てみようかな...


 店から出て左に曲がると、道路を挟んで奥にあるビルに目が行った。

建物の色は真っ赤で、遠くからでもはっきり分かるぐらい派手な色だった。

「ギーゴ」というクレーンゲームがたくさん置いてあるお店だそうだ。

 店内に入って、中を見渡してみる。

沢山のケースが並んでいて、それらの中にはぬいぐるみや何か物が入っているパッケージが並んでいた。

隙間なくぎゅうぎゅうに並べられた機械にみんなは並んで、景品を取ろうと頑張っている。

 少し歩くとクレーンゲームの中に白髪に青い服を着たキャラクターのフィギュアがあった。

もしかして、私の他にこの地に来たリパラオネ人がいる...?

「せ、翠!もしかして、この人も、まさか、私と同じ...!?」

「ああ...それはガーリーエアフォースのキャラクターだな...」

戸惑った顔をした翠は、おそらくこの人がリパラオネ人ではないことを示した。

確かに、よくよくパッケージを見ると、「ロシアから亡命してきたアニマ・・・」と、明らかにリパラオネ人ではないようなことが書かれている。

「せっかくだし、とってみるか?」

「そ、そうだね」

そうして、私はクレーンゲームで遊んでみることにした。

アームを慎重に景品に向かって動かして、掴む。

 しかし、中々うまくはいかない。

「うわぁ〜!また取れなかった!」

景品の端をクレーンは掴んで持ち上げるが、すぐに落としてしまう。

あと少し、というところで落ちてこない...もどかしい...

そんなとき、クレーンのアームが景品を押し上げて、取り出し口に落ちた。

「やった!翠、やっと取れた!」

 しかし、危惧すべきことが一つあった。

景品を取れはしたが、それまでに使った料金を思い出したことだ。

「お金いっぱい使っちゃった、ごめんね...」

「いや、大丈夫だから安心してくれ」

取れたことへの嬉しさと罪悪感に少しもやもやした。


 「いい経験をしたわ!」

あの後もアニメイトや、喫茶店にも行った。

あのウェイトレスさんたちは、「にゃん」って知らない単語を語尾に付け加えていたと思う。

何かの相位動詞なのかな...日本語はとても難しい...

 そんなことを考えながら、最寄り駅に入り改札を抜ける。

次はシブヤという街に行くらしい。

また訪れるであろう発見にわくわくしながら次の目的地、シブヤに向かう電車は走り始めた。


Respected by ”シャリヤちゃん、梅田を歩く”&"異世界転生したけど日本語が通じなかった"

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シャリヤちゃん、東京を歩く ペクテノ @Pekteno_hk0804

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