ボヤオとエース記者の小さくて大切な日々の物語

芸能記者の経験をお持ちのじゅん麗香先生の新作です。

私は週刊誌記者というお仕事にあまり良くない先入観があり、タイトルから先生の体験談のあれこれを交えた私には無粋と思える様な取材体験が物語られる作品なのかなと思い込んでおりました。

読み始めた当初は主人公・佐藤澄生のドジとそれを咎めるエース記者・佐藤紫子さんの活躍の構図が浮き彫りとなり、これは大変だと思いながらもこの内容で自分は楽しく読み進められるのだろうかという不安もありました。

しかしながら読み進めていく内に自分が大きな勘違いをしている事に気付きました。
この物語の最初の入りは只の世界観の説明でしかなく、読者に語られるべき真の物語が密かに始まっておりました。

中盤から物語の焦点がある話題に集約されていくのですがそこで語られるヒューマン・パパラッチストーリーの展開の早さと緻密な描写と絶妙さと驚くべき秘密の露見、そして紫子さんがこれまでに見せなかった一面とボヤオ自身の変化にページを捲るのももどかしく夢中で読み進めました。クライマックスではラスボスと対峙する運命の姫と側に控える守護騎士の戦いが描かれてその描写に夢中になりました。

そしてエピローグでは細かい事は書きませんが読者をくすっとさせて今後の展開を想像させます。西園寺愛社長曰く「あなたの彼女は苦労しそうね」との事で。

読み終えてみるとこれまでの作品とはまるで毛色が異なる、そして従来の作品に匹敵する程没入させてくれる素晴らしい作品でした。

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