芸能記者の経験をお持ちのじゅん麗香先生の新作です。
私は週刊誌記者というお仕事にあまり良くない先入観があり、タイトルから先生の体験談のあれこれを交えた私には無粋と思える様な取材体験が物語られる作品なのかなと思い込んでおりました。
読み始めた当初は主人公・佐藤澄生のドジとそれを咎めるエース記者・佐藤紫子さんの活躍の構図が浮き彫りとなり、これは大変だと思いながらもこの内容で自分は楽しく読み進められるのだろうかという不安もありました。
しかしながら読み進めていく内に自分が大きな勘違いをしている事に気付きました。
この物語の最初の入りは只の世界観の説明でしかなく、読者に語られるべき真の物語が密かに始まっておりました。
中盤から物語の焦点がある話題に集約されていくのですがそこで語られるヒューマン・パパラッチストーリーの展開の早さと緻密な描写と絶妙さと驚くべき秘密の露見、そして紫子さんがこれまでに見せなかった一面とボヤオ自身の変化にページを捲るのももどかしく夢中で読み進めました。クライマックスではラスボスと対峙する運命の姫と側に控える守護騎士の戦いが描かれてその描写に夢中になりました。
そしてエピローグでは細かい事は書きませんが読者をくすっとさせて今後の展開を想像させます。西園寺愛社長曰く「あなたの彼女は苦労しそうね」との事で。
読み終えてみるとこれまでの作品とはまるで毛色が異なる、そして従来の作品に匹敵する程没入させてくれる素晴らしい作品でした。
作者様が元芸能記者なだけに、業界人以外にはわからない芸能記者の実態がリアルに描写されています。これは、体験取材やネットで検索するぐらいでは書けないリアリティですね。
芸能記者は他人のプライバシーを暴露するため、中々理解されにくい過酷な職業だと思います。でも主人公のボヤオこと澄生が、先輩でやり手美人記者の紫子にビシバシ鍛えられ、報道カメラマンとして成長していく様子を読むと、不思議と共感を持てるんです。
それだけでなく、澄生と紫子の恋の予感もやんわりと感じられてワクワクします。イケメン(原石)カメラマンと美人記者の恋!ちなみに私は、勝手に紫子は作者様がモデルかなと妄想してしまいます。続きが楽しみです。
主人公・澄生の職業は報道カメラマン。気の強いエース記者・紫子さんに振り回される日々を送っています。
今起きている出来事をカメラに収め、真実を知りたいと思う人へ届ける仕事。かっこいい仕事のように思えますが、報道カメラマンのまたの名はパパラッチ。隠されていた芸能人の秘密を知ってしまうことで、傷つく人が出てこないとは言えません。
誰にでも喜んでもらえるとは限らない仕事に、澄生や紫子さんが入れ込むワケとは。
澄生の残念イケメンっぷりや、紫子さんのふっとんだ価値観に笑わされつつ、熱い人間ドラマを追ってみませんか?
作家は経験したことしか書けない。
なんて言葉を信じているわけではありませんが、お話を書く上で経験は大きな武器になると思います。
例えばお仕事ものなんて、実際にその仕事をやったことがあるかどうかで、描写に大きく差が出そう。
そんな中本作は、フリーライターをやっていた作者様が書く、カメラマンと記者のお話。
そちらの業界にいた経験が十分に活かされているようで、書かれ方が美女にリアル。
世の中に出るスクープ記事の裏側にはこんなやり取りが、そこにたどり着くまでにはこんな苦労があったのかと感心させられます。
さらに本作の魅力は、マスコミの裏側をリアルに書いたというだけでは終わりません。
主人公である新人カメラマンの澄生くんと、先輩のエース記者である紫子さんの人間ドラマ。
この業界に入ってばかりでまだ右も左もわからない澄生くんが紫子さんに教わりながら、どうやって成長していくのか。
さらに、紫子さんもある事情を抱えているようで、どうやってそれを知り解決していくのか。
気になる部分は追っているスクープだけではないのです。
普段誰かにカメラを向けている彼らですが、読者としてはそんな彼らの行方も気になります。
スクープを狙うパパラッチ達の物語。
報道カメラマンになったばかりの新人、澄生は、エース記者の紫子と組んで、著名人の隠された姿やあっと驚く秘密を暴くため、日々怪しい場所に張り込んでいく。
まだカメラマンになって日が浅い澄生は失敗続きで、よく紫子からダメ出しを食らっていますけど、落ち込んでも立ち上がる度に少しずつ成長する姿は、応援したくなります。
秘密を暴くパパラッチというと、煙たがる人もいるでしょうけど、彼らは真剣そのもの。
いったいどんな気持ちでスクープを求め、著名人を追っているか。
普段は暴く側の彼らの内情、胸の内を、覗いてみてください。