物語は、貴族の前で舞を披露した夜、白拍子の女性が鬼に襲われるところから始まります。
あわやと言うところで助けに入るのが、謎の陰陽師でして、彼には大きな秘密がありました。
鬼に付け狙われるのを守って貰うため、白拍子は陰陽師との取引に応じるのですが……。
タイトルから漂うレーティング感ですが、そこは陰陽師の術で極めて健全に描かれるので、その手の描写が苦手な方も安心して読むことができます。
私も安心して読めました。
ヒロインを追う鬼を退けるため共に過ごし、絆を育ていく二人は、ひたすらにロマンチックです。想い合うようになる過程がしっかりと書かれていて、二人を結ぶ愛情にも納得感があります。
陰陽師側の事情がある意味凄すぎて、微妙に浮世離れしている感があったりもしますが、ヒロインがきちんと一般的な感覚の持ち主なので、展開に唐突感もありません。
ある意味では平安物らしい、神や鬼が連なる世界観も、主人公達の愛のエッセンスになっていますね。
やがて子宝に恵まれて、鬼との対決があって……。
そこからが更に怒涛の展開があります。
何と言うか、ヒロインが真面目で庶民的な感覚を持っているのが分かるからこそ、尚更大変だなあと思える展開ですね。
苦難を越えてもまた苦難が続くと言いますか。
愛は尊さと辛さが表裏一体なんだなあと、何度も思わされる作品です。
はるか創世の昔、天帝が邪神を封じました。そして天妃が人界の災厄、四凶を封じました。
落ちた天妃の魂を求めて、天帝の黒緋もまた人界に降り立ち、伊勢の白拍子である鶯と出逢う……本作は平安時代の日本と、道教および春秋左氏伝を組み合わせた、和華折衷の物語です。
天妃ではあり得ないはずの鶯に惹かれてしまう黒緋、すべてを知ってなお黒緋を愛してしまう鶯、そして天妃と思われるほどの神気を持つ鶯の妹の萌黄、三人の想いが絡まり合い、紐解かれていく本編も素晴らしいのですが、そろいもそろって幸せに暴走する本編後番外編もニマニマ必至のおもしろさです!
神話があった。天にいる天帝は、天から愛おしい人間たちを見守っていた。しかし、人間の世界に四つの災いが降り注ぎ、人間たちは無残に殺されていった。それを悲しんだ天帝を見た天帝の妃は、天から人間の世界に降り、四つの災いをその身に封じた。これによって、人間界に平和が戻った。
主人公は斎宮に仕えている白拍子。都からの召喚に応じて、今夜の宴では一人で舞うことになった。しかし、舞を終えたその晩に、主人公に懸想し、夜這いに来た男がいた。男から逃げる主人公を助けたのは、不思議な術を使う一人の男性だった。男性は主人公に子供を所望する。白拍子として軽んじらることに怒りを感じていた主人公だったが、男性の説明を受け、身を穢すことなく子供を授かる。しかし、男性はこの子供に対してスパルタだった。一体何故?
そんな折に、主人公の双子の妹が都にやって来る。男性は斎宮である妹を手厚く歓迎し、仲睦まじい姿を見せる。それを見た主人公は、自分は身を引くべきだと思い、都を出る覚悟を決めるのだが……。
果たして、男性の正体は?
何故男性は子供に対してスパルタなのか?
そして、主人公に隠されていた秘密とは?
一人一人のキャラクターが魅力的で、神話が鍵となって物語が展開し、
そこに恋愛やバトル要素が組み込まれている一作です。
特に和風ファンタジーが好きな方にお勧めです。
是非、御一読下さい。