最後の仕事 七 〜依頼〜

 八百請負人衆への依頼は、桜の仲介で順調の進んだ。


 流澄が顔合わせをしたい、と言うので、桜は樅慈と日取りを決めて、会合を設けた。


 当日、ふたりは煌陽公園のベンチで八百請負人衆を待った。煌陽公園は、下宿から徒歩十分の大きな公園だ。


 木陰が心地よくて、流澄は思わずうとうとしてしまった。


「……さん、流澄さん」


「んー」


 桜に呼ばれてまぶたを上げると、三人の人の姿が前にあった。 


「初めまして、探偵さん。午睡ひるねの邪魔して悪いねぇ」


「こちらこそ、初めまして。ロングスリーパーなものでね、失礼した」


 目の前に立つ女は、白いシャツにくるぶし丈のスラックスという格好だった。

 作業服ではないが、特徴的な声で、この前の女であることはすぐに分かった。


「私は樅慈。そんでこいつが烏。で、こいつが宰薔さいしょう


「私は探偵の静星流澄だ、皆さんよろしく」


 流澄は少し姿勢を正した。


 樅慈の背後には、人形のように姿勢よく立つ烏と、赤髪の痩身の男が立っていた。


 宰薔という男は、ゆるい巻き毛の赤髪に金のピアス、そして襟を大きく開いたシャツという格好で、青い目を細めている。いかにも尻が軽そうだ。


「ご依頼感謝しますよ。あの保安局と懇意こんいになるなんて、大したもんだ」


「少し事件の解決で関わっただけですよ。それでは本題に入りましょう」


 流澄はごほんと咳払いをした。


「まず、あなたたちにはベルメールでの護衛を頼みたい。そして、皇宮潜入の手伝いをしてほしい」


「それは寿々木殿から聞いたよ。具体的な作戦の話をしよう」


「そうかい。話が早くて助かるよ」


 流澄と桜は目を合わせ、互いにうなずいた。

 周囲には五人の他に気配はない。


 流澄は自分が考案した作戦を、四人に伝えた。

 

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探偵と教師の共同生活 御影聖 @hijilimikage

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