エピローグ 終わった後の思いたち(お知らせあり)

 すべてが一段落した後、パメラとアレクシスは制圧された者たちを魔法で連行して他の者たちと合流した。


 瓦礫にかかっている魔法は健在で、人を探しながら進むのはかなり骨の折れる仕事だった。しかし邪魔者がいなかっただけに、ゆったりとしながらも自信を持って進めることができて結局、皆と無事に合流することができた。


 ……実は他の妨害者が現れるかずっと警戒したが、幸いことにそのような気配はなかった。


「パメラ第一皇女殿下! ご無事ですか!」


 アルニム侯爵は合流するやいなや心配そうな顔で駆けつけた。そしてパメラの前に着くやいなやひざまずいた。


「誠に申し訳ございません。殿下を危険にさらしてしまった罪、この身で償います」


「いいえ、大丈夫ですわ。卿の意図でもありませんし、なんとか生き残ったもの」


「それは殿下が優秀な魔法使いであってこそ可能だった奇跡。それはとても幸いなことなのですが、そうでなかったら今頃殿下がどうなったか断言できません」


 アルニム侯爵の言うことは正しい。そもそも今回のことをありのままに伝えるなら、彼の罪が取り上げられることを避けられないだろう。


 しかし、パメラには今回のことの罪を問うつもりがなかった。


「大丈夫ですの。起きてください。そして今回のことについては皆に口止めを」


「ですが……」


「お願いで足りなければ、皇女の命令にしましょう。今からここから完全に脱出するまで私をよくご補弼ください。今回のことはそれで不問に付します」


 アルニム侯爵は当惑した表情のままパメラを見上げたが、すぐに頭を下げた。


「……殿下のご恩寵に感謝を」


 パメラはそれを笑顔で受け入れた。


 もちろん、その決定は善意によるものではなかったが。


 今回のことにアルニム侯爵がどれほど関与したかは分からない。無関係かもしれないし、すべてを主導したかもしれない。今回のことを口実に彼を拘禁し、調査することも可能だろう。


 しかし、妙に中途半端な過程と結果が気になった。その上、もし彼が無関係な場合、訳もなく彼を疑って時間を浪費する間に本当の黒幕が姿を隠してしまうかもしれない。


 むしろアルニム侯爵を許すふりをしておき、相手がどんな手を取るのか見守って対応する。それが今回の事件に対するパメラの決定だった。


 一方、アルニム侯爵は体を起こした後、パメラが連行した者たちに視線を向けた。


「この者たちは……?」


「瓦礫の中で私を偵察していた者たちです。不穏な者たちのようでしたので制圧しました」


「なんと。大きな危険にさらされるところでした」


 侯爵はすぐに部下に指示を出し、彼らを拘束した。まだ意識を失ったままだったので簡単だった。


[よろしいですか? もし彼らを操った者がアルニム侯爵なら、せっかく得た手がかりを手逃してしまうことになります]


 アレクシスはひそかに思念で話しかけた。


 パメラも同じく思念で応じた。


[それまで含めた措置ですもの。すでに彼らには魔法の印を残しておきました。外部からの監視も並行するつもりですの。侯爵の素顔を調べる良い機会に活用するようにしましょう]


 たとえ侯爵が今回の裏だとしても、簡単には尻尾を出さないだろう。


 だがどうせ彼らを尋問し続けても意味のある情報を得る可能性はあまりない。生半可なレベルを見たら、核心に触れているような者たちではないから。


 それなら何とか使い方を探す――そう思って、パメラは見た目だけの笑顔で侯爵に接し続けた。




 ***




「おや。つかまったねぇ」


 アルニム侯爵の邸宅の書斎で、ふと。ハゴールは無邪気に笑った。


 彼の向かいに座っていたアントシオ男爵がため息をついた。


「結局そうなったのか。我が印章はどうなったのか?」


「さぁね。そんな細かいことまでわかるようにはなっていないよ。でもどうせどうなっても構わないじゃない? 別に大事なものでもなかったじゃん」


 大切なものだったらこんな風の消耗はしなかっただろうという揶揄を含んだ言葉だった。


 アントシオはその本音を聞き、鼻で笑った。


「小僧。貴様が知らないだけだ。物に縛られることより重要な誇りがあるものだ」


「忠誠心も何もない権力の犬がそんなことを言うなんて。誇りが聞いて笑うね。いや、権力の死体を食べるハイエナってのが正しいかも?」


「……貴様」


 アントシオの手が椅子のひじ掛けに食い込んだ。怒りの魔力がこぼれる。


 しかしハゴールは超然と笑うだけで、アントシオはその姿に舌打ちするだけだった。


 いや、それだけではなかった。


「ふん。父に利用されること以外は才能のない無能者がどの口で言っている。権力どころか、何一つ望み通りに行うこともできない弱者めが」


「……おい」


 今度はハゴールが怒りの色を見せた。


 アントシオはそれを鼻で笑い飛ばして、ただ難詰するような目をした。


「それにしても、今回は何が目的だ? そんな分かりやすい方法で皇女を狙うなら、侯爵家と関係があることを隠すことはできないはず。だますために印章をくれたが、それだけで騙されるほど愚かな皇女ではないはずだぞ」


「フフ。黒幕が黒幕であることを隠して怖がるのは下手なんだよ。真の実力者なら、自分の存在を明らかにしても目的を達成することぐらいは簡単なことだね。いや、表に出すことさえも戦略の一つとして活用するんだよ」


「相変わらず頓珍漢な奴らだ。だがそのような謀略を備えてこそ、アルニム侯爵がテリベル卿の席を占めたのだろう。……貴様も父の欲望に振り回されっぱなしで終わらないように祈ってやる」


 アントシオは立ち上がり、すぐに書斎から出た。ハゴールだけが書斎に残された。


 彼は閉ざされたドアを妙な目で見守りながら笑った。


「……バカたちがうぬぼれる姿を見るのはいつも面白いね。自分がただの操り人形に過ぎないってことに気付いた時の顔が楽しみだなぁ」


 ハゴールの独り言は誰も聞かず書斎に溶け込んだ。


―――――


今後の更新周期について、お知らせがあります。

結論から先に申し上げますと、本作はこれからしばらく更新を止めて休載に突入します。


このところ2つの拙作を並行連載していたのですが、会社の仕事や個人的な事情などが次々と重なることで、2つを同時に連載するのが大変でした。

そのため時間の不足で本来の連載周期を守れないことが多く、読者の皆さんにとても良くない姿をお見せしました。


そこでいろいろ悩んだ結果、並行連載をやめて一つに集中することにしました。

本作を連載終了というわけではなく、一つを休載して一つに集中して先に完結した後に本作の更新を再開したいと思います。


2つの駄作のうち、どちらを先に完結するか悩んだのですが、もう一方を先に完結することにしました。

正直、現在のプロット上では本作が完結までの道のりはもっと近いのですが、もう一方が私の最初の連載作ですので愛着が深いです。

それにまだまだ先は長いといっても、どんどんクライマックスに向かって走っていたりしますしね。

この勢いを完結までそのまま続けていきたいと思います。


本作はそちらを完結した後に再び連載を再開する予定であり、完結するまでに時間がどのくらいかかるか、現在のところ不明です。だから更新再開の日程を今のところ申し上げることはできません。申し訳ございません。


現在の予想では今年第3四半期に更新再開が可能だと思いますが、確実ではありません。

更新再開が近づいたら近況ノートでお知らせします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悲劇を乗り越えた姫と騎士はお互いのために尽くします ヒース @heathdesu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画