この世界観、見逃すのは惜しすぎる。ゲーム世界を内側から!

  • ★★★ Excellent!!!

 世界を創造した存在は、神と呼ばれるにふさわしいであろうし、実際にそうなのであろうと。その世界に住まう人なら当然に、そう帰結するはず。

 異世界ファンタジーでゲームの世界に転生しちゃった~とか、VRRPGにリアルでダイブしちゃったりする設定のものはよく見かけ、それらはゲームの知識をもった上で冒険を楽しむものが主流。
 しかしなんとこちらの作品、そういう外からの視点を一切持たない内側の人々が主人公。

 研究を繰り返し知識を積み重ね、世界の謎の片鱗に触れる事が出来るようになった塔に住まう編者と呼ばれる人々。イウはその中の一人だったのだけど、なんと彼女は絶望をすると穴をあけてしまう性質があり。ついには大穴を開けてしまって、この世界を破滅に向かわせるという「バグ」と認定され、処分されそうに。
 そんなイウを「バグ」の研究対象として、隅々まで調べ尽くしたい知識欲の権化シュドは、あくまで研究対象の保護としてイウを助け出す。そこで偶然出くわした探索者モリンと共に、逃亡しながら世界の探求をする物語。

 「ゲームあるある」が、その世界の現地の人からはどう見えているかを体感しながら、この美しくも不思議な世界を三人と旅する疑似体験ができる作品です。
 おっとりとした純粋なイウと、探索者として色々な事象を目にして来た活発なモリンとの対比と友情も、心を熱くします。
 
 クスリと笑える要素に、手に汗握るアクションシーンの緩急も見どころ。
 読んだ時間を後悔しない、お薦めできる要素が多い作品です。

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