第2話疑いと最後の晩餐

不味いな...ただでさえデスゲームという疑心暗鬼になっている状態でこんなことが初っ端から起こるのはある意味分かりきっていたことかもしれない。

ゲームマスターからの挑戦状とでも言うのだろう。ここの選択をミスるだけでここにいる奴らの命が吹き消える。

だがこう言い合いはどうしても先手の意見が信用されやすい。後手は明確な話を提示しない限り言い訳を並べるだけになるからだ。


「なっ!健二!!お前人を殺しただと!?16から一緒に暮らした俺らに嘘はなしだって言ったじゃないか!お前はそんなことする奴じゃない!」

「とりあえず16歳からルームシェアしてる嘘つけない親友からの潔白証明ありがとう。

とりあえず俺から言いたいことは一つ。

俺はゲームマスター直々にあんた、幸村洟は前科者だから議論を乱すだろうから気をつけろと言われた。これがどういう事か少し考えれば分かる事だろ。」

「お、おねぇちゃんは犯罪なんてしてないもん!あなた嘘つき!」


そう言いながら幸村の後ろから出てきた高校生ぐらいの女が俺に指を指して睨んできた。

わざわざ分かりやすく説明してやったのにこいつは理解できないらしい。


「確かにそうだ。俺は少なくとも人を騙して殺した事なんてない、君の言う事が真実なら最初にあのゲームマスターの言ってきた事は全部嘘ってことだ。

この状況で冷静になれないのも重々承知だが一旦落ち着いて話をしよう。

俺の予想だと俺ら以外の人達にも同じような人はいるだろ。ある人は手をあげてくれ。」


どうやら話している間に全員揃ったようでそこにいる25人全員が手を上げた。

結果これは早速場を混乱さたいが為にしたゲームマスターの妨害行為のようだった。

冷静に考えれば分かるような話でも冷静さを失うようなこの状況では厄介極まりないものだ。


「疑心暗鬼になるのも分かりますが一旦落ち着いて下さい。

死なずに脱出出来る方法があるのですからそれについて落ち着いて話し合う事がとりあえず大切なんですから。

幸村さんもこの状況で殺人鬼相手に言うのはとても勇気のいることだったでしょう。

あなたの行動は正しかった。ゲームマスターの言葉を信じたままであれば恐らく何人かは死んでしまう状況だった。」

「いやっ、わ、私の方こそ先走って話をしてる時に邪魔してしまってすみません!

賢い人の話をちゃんと聞かずにこの状況にテンパっちゃって...」


彼女はただ正義感でやったことなのだろうが信用された後にこの話をされるよりは今で良かったと思う。彼女の妹に嫌われてしまったようなので後々謝ろう。

その後皆に聞いていくが、〇〇は轢き逃げをして殺しただの、△△は銀行強盗をしたことがあるなどもはや前科者のオンパレードのようになっていた。

隠す気ゼロすぎてすこし笑ってしまう。


するとエントランスの大階段のところに映像が映画のモニターサイズの画面にゲームマスターが映し出された。


「やあやあ僕はゲームマスター、このゲームの管理人だ。先程のジョークは楽しんでもらえたかな?

君が怪しまれた危険な状態から当たり前のように場を収める君の手腕には脱帽だ。

今から君達が何かを話し合うのかは知らないけれどもとりあえず食事ができたから食べたまえ。どうせ誰かの最後の晩餐になるのだから。」


気持ち悪いほどに楽しそうな声は嫌味を残して画面と共に消えるとエントランスの左側の扉が開き奥には高級バイキングのような料理が所狭しと並べられているのが見えた。

すると奥から1人の能の十六中将の面を付けた西洋の使用人のような男が現れた。

漫画とかのデスゲームとかじゃありがちな気がするが現実だとただ痛い奴だ。


「ここでの皆様が過ごされる間、皆様の補助を担当する者でございます。気軽に仲介者とでもお呼びください。

早速お食事の時間ですのでお急ぎください。ゲームの準備開始まで残り45分です。」


仲介者、相手との間を取り繋ぐ人間を呼ぶ時に使う。ゲームマスターの代理に近い人間なのだろう。

とりあえず飯の時にある程度話し合う事が大切だ。


「皆さん、とりあえず食事を取りながら話し合いましょう。お腹が減っては考えられることも考えられないですし。」


そこにはいろんな食材が並んでいた。

米にパン、ウナギやマグロのような魚料理、

オレンジやリンゴのスライス、赤ワインのような酒まで並んでいた。

とりあえず俺はそんなものを無視して奥にこじんまりと置かれていた栄養補給剤を飲み少し上座のような場所からみんなに話し始めた。

皆は丁度食事を取って食べ始めようとしている様子だった。


「一旦食べる前にとりあえずペアである人と固まってくれませんか?小賀さんはとりあえずこっちにきてもらえますかね。色々お話も聞きたいので。」

「おーし、みんなで脱出作戦の作戦会議だ!で!?どうやったら脱出できるんだ!?」


とりあえず瑛士は隣に置いておくが、男と女の比率は6:4ってところか。俺らのように男同士のペアもあればさっきの幸村姉妹のように女同士もある。勿論男女のペアも。


「じゃあとりあえず今の状況を端的に説明します。

まずここは日本ではない海外の島です。

先程階段にあった文字を見るに恐らく東南アジア諸島の無人島って所でしょう。

現在はピストルに玉5発、他の武器は島の色々な場所にあるらしいです。

正規ルートは自分以外を殺すルートですが、それ以外の脱出方法もあるらしいのでそれに関してゲームマスターに聞きながら進めていこうと思います。」


そう言った時に異変が起きた奥の方で座ってる男が急にうめき出した。

先走って何かを食ったようなので急いで小賀さんを連れてその男の元へ急いだ。隣でペアであろう男が慌てて叫んでいる。

男は嘔吐し身体がびくびくと痙攣している

呼吸もしゃくりあげるように変な声を出している。


「誰も食うな!触れるのも絶対にダメだ!

くそ、毒か!小賀さんは急いで吐かせて人工呼吸と心肺蘇生!心停止してる!このままじゃ死ぬぞ!毒のせいで人工呼吸が出来ない!

おい、こいつは何を食った!?食ってどれくらいでこうなった!?」

「うなぎを食った瞬間に変な味がするって吐き出したらすぐに...死なないよな!俺の弟なんだ!」


小賀さんに処置をしてもらっている間に苦しむ男のペアに聞きながら皿の内容を見た。

齧られているうなぎのグリルとオレンジのスライス…赤ワイン、パン

先程のあの男の言葉が一気に蘇る。

“どうせ誰かの最後の晩餐になるのだから。”

最後の晩餐、死刑囚などが最後に死ぬ前に食べる食事の事を指すものだ。

有名なのはレオナルドダヴィンチの名画、最後の晩餐だ。

イエス・キリストと12使徒の最後の晩餐を題材としたもので、裏切り者がいることをキリストが予言した時を描いたものだ。

うなぎ、オレンジ、赤ワイン、パンどれもその絵に登場するものだ。


「うなぎ、オレンジ、赤ワイン、パンは毒だ!

他にもあるかもしれんがとりあえず食事に触れた奴はすぐに洗ってこい!」


すると何人かは手で触れたものがいたがその人たちに異常はなかったようだ。

彼以外は幸いなことに何も食べていなかったようだ。

そしてびくびくと痙攣し、死戦期呼吸となっていた彼が急に動かなくなり首輪がカチャと言う音を立てて取れてピーーと音が鳴った。


「…このゲームの最初の脱落者は浅間遥。

死因は青酸カリによる急性中毒。残りプレイヤーが24名となりました。」


そう静かに仲介者は言うと彼は何処からか現れた黒服の男達に連れていかれ彼の首輪だけが残った。

必死に対抗した彼の兄は膝から崩れ落ちて彼の首輪を抱きながら号泣している。

死者を出さないと言った瞬間からの初の死亡者に全員が恐怖に震えていた。

だが、これは恐らく毒以外にも目的がある。

最後の晩餐に意識を向けさせるためであろう。あの絵は12の使徒の中に裏切り者がいることを予言したシーンを描いたもので現在のプレイヤーの数は24人だ。

そこからわかることは裏切り者は”最低2人”いるということだ。

ゲームはまだ始まってすらいない。



遅くなってすみません!ゆっくりですが楽しんでもらえるように頑張りますので星とハートをよろしくお願いします!









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ただデスゲームに参加させられただけの話 リアス @00000aoto

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