ただデスゲームに参加させられただけの話

リアス

第1話デスゲーム

「今日は実に気持ちの良い朝だ。雲一つない快晴!素晴らしいですね。」


目を覚ますと見知らぬ窓などないカプセルホテルのような部屋にいた俺に画面に映る男は加工された声で話しかけてきた。

拉致監禁か、しかし貧乏一家の俺にこんな事をしても利などないし縛られもせず、ただ首輪が付けられているのと服にネームプレートが付いているというだけなのが不思議で仕方ない。


「おはようございます、秋山健二さん。今日は絶好のデスゲーム日和ですね。」

「…最後の一言で大体理解したがとりあえず言っておく。辞退したいのだが、家で寝ていたらこんな首輪までされて捕まるぞ。」

「ははは、私はこんなのでも政府の中核の人間なのでご安心ください。それに、辞退は結構ですよ?机の上に置いてあるピストルで自分を打てばこの世から脱出できますよ?」


男の話す内容を聞いてこの理不尽すぎる状況に腹が立つがそんなことを考えている暇はない。思考を加速させる、脳をフルで使って状況を把握しろ。

辞退は無理、何人か知らんがピストルを渡すからとりあえず対人の戦闘がある。

扉は閉まってる、当たり前。服は上下白の服にネームプレートと首輪。私物はなし。

とりあえずデスゲームの情報だ。


「とりあえずゲームルールと参加人数、諸々の情報を貰おう。」

「あぁ、そうですね。まずはルール説明。

今日は2023年11月30日木曜日現在の時刻は午前8時。この島のホテル、そこには君含め現在25名のプレイヤーが各々各部屋て同様に私の部下がゲーム説明をしている。

初期装備はピストルと弾5発、そして1時間後に部屋の扉が開く。

このホテルから出て30分後からゲームが開始される。各自で組むなり、敵対するなり、廃墟や森に潜んだりなど準備フェーズだ。

そして9時半にゲームスタート。

参加者が最後の1人になるまで殺し合ってもらう。ただそれだけだ、ゲーム開始と同時に君達には日本国の法律は全ての効力を失う。

島には色んなところに武器が隠されている、それを探しながら、殺すなり、脅すなり、拷問するなりして生き残るというゲームだ。

プレイヤーは25名だが各2人ずつのペアで連れて来させてもらった。君は瑛士くんというお友達が共に呼ばれたよ。」


聞きたいことは山ほどあるが一旦整理しよう。

まずここはどっかの島のホテル。

俺が寝たのが29日の午前0時半だから31時間半で行ける距離にあるどこか。

俺含め25人のプレイヤーが現在同じような説明を受けている。その殆どが二人組ずつで連れて来られていて俺の場合は親友の瑛士だったらしい。

2人以上のチームができるのには時間がかかるだろうし結束も弱い、ゲームとしても難度はかなり高い。

最後の1人までという事は最終的にペアでさえ裏切り合う可能性があるからこそ自分以外の誰も信用できない。わざわざここまで不安を煽るように考えられいるのか。

1時間半後からゲームが開始される。


「とりあえず聞きたい事が4つある。

1つ目、ペアのいないプレイヤーについて

2つ目、全員殺す以外の脱出方法はあるか。

3つ目、武器の種類がどんなものか後防御す

る盾などがあるのか。

4つ目、ここは日本の領土、又は排他的経済水域に属する場所か。

それぞれ言える範囲でいい。」


「君凄いね。僕がその立場ならそんな落ち着いて物事は考えられないよ。

とりあえずお言葉に甘えて答えられる範囲で答えさせてもらう。

1つ目、ペアなのに25人と奇数な理由、それはプレイヤーが自衛隊の戦闘特化の人物だからだ。その男がどの立ち位置につくかによって戦況が変わる、粋な計らいってやつさ。

2つ目、全員殺す以外の脱出は理論上可能だ。まさか始まる前にこんな核心を突かれるとは内心ヒヤヒヤさ。だけどそれはかなり難しい、全員殺すより。

次3つ目、武器の種類は内緒だ。勿論防御するための物についても。知ってしまったら面白みがないそれだけさ。

最後4つ目、本当に君は人の痛いところを突くのがうまいねーまぁはっきりいうとここは一般定義される日本国の領地や排他的経済水域には属さない場所だ。

これで以上かな?部屋を出た後何か聞きたいことがあればその首輪を2回タップすると話が出来るよ。」


日本でないのはおおかた予想は出来ていたがとりあえず殺さなくても良い逃げ道があることを知れただけでもとても良い情報だ。

しかもいつでもこいつ、ゲームマスターと話す事が出来る首輪があるのだから裏も取れる。殺し合わずに脱出出来るかもしれない。

だが脱出してもどうする、海外という事はパスポートがないから密入国者だ。金も飯もない。流石に対応してくれるだろう。

しかし自衛隊員がいるのは恐ろしい、もしも敵対してしまえばゲームしかしていない俺は死ぬのはは確定してしまう。


そんなことを考えているとガチャっと音が鳴った。恐らく閉まっていた扉の鍵が開いたのだろう。


「さぁ、一回のフロントにでも向かいたまえ。IQ182の史上最年少メンサ会員の君の頭脳に期待しているよ。」

「最後に聞いておくがもし脱出したら元に返してくれるのか?政治家なんだろ?馬鹿なふりして返答から逃げようとするのは良くないぞ。」

「耳が痛くなる話だね、だがそこで君が杞憂する必要はない。しっかりと家に返してあげるよ。後出ていく前に最後、幸村洟は前科者だ、恐らく君の意見を乱す敵となるだろう頑張ってね。」


モニターからの声が聞こえなくなったのを確認してピストルに弾を込め部屋を出た。

幸村洟は前科者?恐らくその女に俺に対してのなんらかの対抗手段を渡してきているだろう。

そんなことを考えながら部屋を出ると丁度のタイミングで隣から人が出てきた。


「おおぉ!よかった!健二!大丈夫か!?ここは一体...それよりデスゲームってやべぇよ!」

「落ち着け瑛士、とりあえず殺さなくても脱出出来る方法があることは分かった。

恐らく他も俺らみたいに頭脳タイプとパワータイプの人間の2人組だろう。頭脳タイプをまとめて話し合いたい。」

「分かった!お前の言うことはいつも正しいからな!もしもの時はこのサバゲーで鍛え上げた技術をお前の為に存分に発揮するまでだ!」


命をかけたデスゲームだというのにいつもと通り変わらない馬鹿さで笑わされてしまった。とりあえずフロントで何をするかを考えながら一階のフロントへと向かった。


そこにいたのは俺達は含めて18人、後7人はまだ来ていないようだが殆ど固まっている中で1人だけ迷彩服を着ているあの男が恐らく自衛隊員だろう。見るからに鍛え上げられていて空手日本三位の男である瑛士とも見劣りしないガタイの良さだ。


「なぁ、あんた。もしかして1人で参加する自衛隊員ってあんたか?」

「あぁ、そうだ。俺の名前は小賀悠斗、階級は准尉だ。銃の扱いには慣れている。とりあえず俺はゲームの重要キャラって奴だ。誰についたりとか全く決めていないが、とりあえずよろしく頼む。」


俺達の会話が聞こえた人間はこちらが気になるようだ。

まぁ、敵に自衛隊がいるなんて状態になればそんなん恐ろしい話だからな。


「俺の名前は秋山健二、21歳一応IQ182のメンサ持ちだ!頭使う系とかややこしいことは任せろ。隣のこいつは岡村瑛士、空手黒帯で日本三位サバゲーが趣味の21歳。脳みそが筋肉で出来てる系の男だ。」

「メンサか...人類の上位2%のIQを持つ人間だけが入れるものだったな。それに君は空手日本三位とは素晴らしいな。いい鍛え方をしている。どうだい?自衛隊に入らないか?」


しかし自衛隊員の小賀も瑛士と張り合えそうな筋肉マッチョなので油断できなさそうだ。

とりあえず俺はフロントの階段の途中からみんなを見下ろす形で呼びかけた。


「あーあーみなさーん、デスゲームって話なんすけどーゲームマスターに聞いたら殺さなくても脱出出来る方法あるらしいんで殺さず仲良くしませんかー」


俺の言葉に反応したみなが次々と首輪を使って質問している。そして俺の言葉と準じたような回答が返ってきたようで本当なのかと驚いていた。しかし、数人はもう知っていたのか、はたまた聞く気がないのか動くそぶりも見せない。


「あのーちょっと言いたいことがあるんですけど...」


話しかけてきた女性のネームプレートを見ると幸村洟と書いてあった。こいつが例の女か...


「なんですか?質問は俺じゃなくてゲームマスターに聞けば良いじゃないですか。」

「…部屋を出る時に言われたんですけど、あなた人を騙して殺した事があるって言ってましたよ!先程のお話も聞いていましたけれど本当なら、先程の話自体全部嘘なんじゃないですか!?」


このデスゲームはまだ始まったばかりだ。


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