第4話 狂

 瞬きをした間に全てが起きていた。


 幾千も降り注いだ矢は、皇真夜中には

 矢に貫かれたのは大地と彼岸花。

 あとは、


「ぐあ……」


 皇一馬だった。

 全身に矢が刺さり、ハリネズミのような無惨な姿になっている。


 皇一馬が息子を庇ったのではない。皇真夜中が、父親を〝盾〟に使ったのだ。


「ま、よ、なか、おまえっ」


 吐血して、皇一馬は仰向けで倒れた。


 え? 

 どういうことだ?

 父親を助けにきたはずなんじゃ……?


「……ひゃ、は!」


 僕はギクリとした。皇真夜中が、肩を震わせて笑っている。


「すごい、こんなにズタボロになっとるのに、まだ生きとるわ! やっぱり地獄はええなぁ! !」

 

 裂けた口が広がって、歪な笑みを生み出す。目は恍惚とし、頬は朱に染まっている。


 彼は何なんだ!?


「てめぇ、俺を助けにきたんじゃねぇのか!?」

「あぁ? そんなわけないやろ」

「け、けど、さっきは俺のことを探してたって!」

「あー、探しとったよ? お前が出所したら、俺がこの手で殺してやろう思ってたのに。勝手にムショで死んで、こんな所に堕ちとるんやから。苦労したわ」


 皇真夜中が、父親を足元に放る。


「とりま、あの邪魔な奴ら、ぶっ潰してくるから」 


 父親を踏み台にして、皇真夜中は獄卒の大群へ飛び立っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る