第3話 異質

〝お前ってバカだよな。成績カスじゃん〟


〝体育祭、お前がヘマしたから負けた。俺らの青春の思い出どーしてくれんの?〟


〝どもるし、ヘラヘラしてキモい〟


〝お前が悪いんだよ〟









〝巡! 何でそんなに弱いんだ!? お前がオドオドしてるから、いじめられる原因を作るんだ!〟


〝そうよ、お父さんの言う通りよ。貴方のせいで、お母さんたちは恥をかいているのよ!?〟






 


〝ほう、そなたは自ら命を絶ったのか〟


〝まだ17歳か。親御さんはさぞ悲しんだであろうな〟


、遺族は死ぬまで悩み、苦しむのだ。お前が悪い〟


〝よって、そなたは地獄行きとする〟







 お前が悪いって、ずっと言われてきた。


 なのに皇真夜中は。


「僕が、悪くない……?」

「せや。死にたいって思うくらい、いじめられて、苦しんだんやろ?」

「で、でも僕は昔から取り柄がなくて、みんなをイラつかせるんだ。だ、だから嫌われるのは仕方なくて」

「お前がどんなポンコツか知らんけど、いじめていい理由にはならんわ。どうしてお前が地獄行きになったんやろ? 閻魔ってアホなん?」

「そんな奴ほっとけ! 早よ行くぞ!」


 皇一馬は息子の腕をひっぱる。


「に、逃してはならん!」


 意識を失っていた先輩が目を覚ました。でもダメージは大きいようで、立ち上がることは無理そうだ。


「阿頼耶識よ、あの男は〝異質〟だ」

「いしつ?」

「あぁ、半年しか勤めていないお前は知らないだろう。我ら獄卒の間で語り継がれている伝承があるのだ。10000年に一度、地獄の秩序を揺るがすほどの力を持つ〝異質の囚人〟が来ると!」

「皇真夜中が、異質の囚人……?」


 ゲームのバグのような存在なのか?


「そうでなければ合点がいかぬ。鬼さえも拘束する地獄の縄を解き、獄卒の腕を容易に折るなど! 早く閻魔様に報告を、」

「はは! ええこと聞いたわ!」


 先輩を遮って、皇一馬が高く笑った。


「俺の息子が異質? つまりチートってことか? 最高や、もう獄卒なんぞ怖くないわ!」


 笑いながら、動けない先輩を蹴りつけ、僕の腹を殴った。


「うっ……」


 腹が苦しい。あぁ、昔のいじめを思い出す……。


「やったれや真夜中! あの獄卒どもをぶっ殺したれ!」


 瞬間、矢が一斉に放たれた。

 同時に皇真夜中は、動いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る