第5話 真夜中

 皇真夜中は、やはり異質の囚人なのだ。目の前でそれが証明されている。

 訓練された獄卒たちが、次々と倒されていく。獄卒の武器を受け止め、奪って、確実な反撃を喰らわせる。

 一騎当千。そんな言葉が思い浮かんだ。昔よく遊んだ、爽快系バトルアクションのゲーム画面と、同じ現象が起きているのだ。


 失神した獄卒が、強雨のように空からバタバタ落ちてくる。皇真夜中も負傷しているけど、彼は笑みを崩さない。ひどく楽しそうだ。


 僕は気づけば、皇真夜中の人生が綴られた巻物を夢中で読んでいた。


 彼の生涯はその名前の通り、真っ暗だった。


 生まれてすぐに両親が離婚。育児放棄をされる。加えて父親に犯罪歴があることで、差別といじめに遭っている。


 死因は、僕と同じで自殺だった。


「おとなしく罰を受けるのだ!」


 1人の獄卒が叫ぶ。


「このままでは、お前は閻魔様によって魂を消滅させられる! 二度と輪廻には戻れないぞ!」

「かまへん。どうせどこも地獄やろ」


 皇真夜中は棘だらけの棍棒を振りかぶって、獄卒を吹き飛ばした。



「撤退! 撤退!!」


 勝てないと判断したらしく、大群を指揮していた老齢の獄卒が大声で命じた。

 空へ消えていく獄卒たちを、皇真夜中は追わなかった。

 

「あ、あの」


 今度は僕が、皇真夜中に問いかけた。


「貴方はどうして自殺をしたのですか?」

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