第6話 布団の中に隠れる君

カーディナルの手には、緑色のカシミアのショールが入っている包みを持っている。

ヴィオレッタに相談し、エルジュへのプレゼントをショールに決めた。

何色にするか長いこと悩んだ末、エルジュの亜麻色の髪には、緑色のショールが似合うと思い緑色を選んだ。


「ただいま」

緊張でカーディナルの声は少し掠れた。

「おかえりなさいませ、旦那様」

カーディナルを出迎えたのは、リーフデ家に仕える執事だった。

いつも出迎えてくれるエルジュが今日はいない。

「……エルジュは今、どうしている?」

「それが、熱を出されて……」

カーディナルの目が見開く。

「大丈夫なのか!?医者は?薬は?エルジュの容態は今どうなっている!」

いつも物静かなカーディナルが珍しく取り乱す姿を見せ、執事は少し驚く。

「医師に見せました。季節の変わり目ということもあって、熱を出したようです。処方された薬を飲んで、奥様は今、自室で眠っています」

「そうか……エルジュの様子を見てくる」

カーディナルは急ぎ足でエルジュの自室へと向かった。



そっとベッドで眠るエルジュの側にカーディナルは腰を掛けた。

エルジュは体が辛いようで、少し苦しそうな表情で寝ている。

少し汗をかいていたので、カーディナルはそっとエルジュの額にタオルを当てると、エルジュが身動ぎをし、潤んだ若草色の瞳がカーディナルの姿をとらえた。

「あ……すまない、起こしてしまったか」

すると、エルジュは目を見開き、バッと布団を引き上げて顔を隠してしまう。

「え、ど、どうしたんだ……エルジュ?」

「み、見ないでください〜!お化粧落とした顔なんて見ないでぇえ!それに、旦那様っ風邪になってしまいますっ!早く退室を!あと、私の間抜けな寝顔は忘れてください!」

カーディナルはどうしたらいいか悩んだ末、布団からはみ出ているエルジュの頭を撫でた。

「な、何で頭を撫でるのです、旦那様っ」

チラッとエルジュが顔を覗かせた。

「その……可愛らしいなと思って。そうだ、エルジュ、体調はどうだ?寝顔が苦しそうだった。あと、汗をかいている。着替えたいならすぐに使用人を呼ぼう」

「……水が、飲みたいです」

カーディナルに体を起こすのを手伝ってもらい、エルジュはゆっくりと水を飲んだ。


「ゆっくり休みなさい。何かあったらすぐに、人を呼ぶように」

カーディナルはエルジュの頭を撫でる。

すると、エルジュは不満そうな顔をした。

「私って子供っぽいですよね……」


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