第3話 姉弟そろって美人

「おかえりなさい、旦那様」

パタパタとエルジュは帰宅したカーディナルに駆け寄った。

「あぁ、ただいま」

ヴィオレッタと同じく、サラサラの銀髪。そして赤色の瞳がエルジュの若草色の瞳をじっと見た。

「今日はどうだった」

カーディナルはいつも、エルジュのことを気にかけている。こうやって、今日はどんなことがあったのか、聞いてきてくれるのだ。

「今日はヴィオレッタさんとお茶会をしました!ベイクウェルタルト、喜んでもらえました。それと……」

エルジュの話をカーディナルは時折、相槌を打ちながら最後まで聞いてくれた。



カーディナルはクールな人だとエルジュは思っている。

クールと言っても、別に冷たい人ではない。

ヴィオレッタと同じく背はすらっとしていて、佇まいがとても美しい。

表情筋は死にかけているようで、笑っているところをエルジュは見たことがない。

見かけは冷たい印象の人だったが、結婚して一緒に生活をする内に、優しい人だとわかった。

朝食と夕食は必ず一緒に食べてくれる。

エルジュの話をちゃんと聞いてくれて、わからないことがあって質問すれば、ちゃんと答えてくれる。今みたいに……。


「旦那様、ヴィオレッタさんの好きな色って何でしょうか?」

「姉上の好きな色は、紫色だな。特に青紫色」

エルジュは頭の中のメモ帳にしっかりメモする。

(青紫色の刺繍糸を持っているか確認しなきゃ)

今度、ヴィオレッタに刺繍入りのハンカチを送ろうと考えたエルジュは、どんな刺繍をしようかワクワクしながら考えていた。

ふと、カーディナルと目があった。

カーディナルは何か言おうとしていたのか、口を開きかけていた。

「あの、旦那様、どうされましたか?」

「……いや、何でもない」

カーディナルは「酒をとってくる」と言って席を立った。


エルジュはカーディナルの後ろ姿を見て、姉弟そろって美しいなと思った。

背は高いし、指先も細くて長い。まつ毛バシバシだし、羨ましいぐらいに髪はサラサラ。

エルジュはますます、大人っぽい女性への憧れが膨らむ。

「今度ヴィオレッタさんに会ったら、使っている化粧品を聞いてみようかな……」

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