第5話 姉弟のお茶会
ゴホッとカーディナルは飲んでいた紅茶を吹き出しかけた。
「ちょっと、大丈夫?」
ヴィオレッタはそう言うが、しれっとカーディナルがお土産に持ってきたケーキを食べていた。
今日、カーディナルはヴィオレッタに呼び出され、久々に姉弟でお茶を楽しんでいた。
「もう、急にむせるからびっくりしたじゃない」
「姉上のせいなんですけど……」
ヴィオレッタが「キスしたいぐらいエルジュって可愛いわよね」と言うので、カーディナルはむせたのだ。
「大丈夫よ、唇は避けておくから」
パチッとウィンクするヴィオレッタ。
「そうだ、カーディナル見て!素敵でしょ、このハンカチ」
ヴィオレッタはパッとカーディナルの目の前でハンカチを広げた。
アマリリスの刺繍がされたハンカチだ。
「姉上の好きそうなハンカチですね」
「エルジュがくれたのよ」
ケーキを食べようとしていた手が止まるカーディナル。
得意げなヴィオレッタの顔にカーディナルは少し苛立った。
「聞いたわよ、貴方、結婚してからエルジュに一度もプレゼント贈ってないんですってね」
「な、何で知っているんですか……」
「エルジュから聞いたのよ。まったく、何やってるのよ?エルジュから愛想尽かされちゃったらどうするのよ」
ぐっと喉をつまらせるカーディナル。ヴィオレッタはため息をついた。
「何でプレゼント贈らないの?」
「……な、何を贈っていいのか、わからなくて」
カーディナルのその言葉を聞いたヴィオレッタは飽きれた表情をした。
「エルジュが、旦那様は私の話をいつも聞いてくれるんです〜って言ってたんだけど?エルジュの会話の中にヒントがあると思うのだけど?まさか、本当は聞き流してたの?」
カーディナルは慌てて首を横に振った。
「ちゃんと聞いてますよ!聞き流すわけがない!楽しそうに喋る姿を見ると、疲れが吹き飛ぶし、より一層彼女がどんなことが好きなのか知れる貴重な時間だし、姉上の話題が多いのがちょっと癪に障るけど……」
ハッとなるカーディナル。目の前のヴィオレッタがにやにやした顔でこちらを見ていた。
「本当に大好きなのねぇ、エルジュのこと」
心の中で舌打ちをしたカーディナルは、ごほんっと咳払いをして気持ちを切り替える。
「その……姉上、エルジュにプレゼントを贈りたいのですが……相談にのってもらえませんか」
「もちろん。最高に素敵なプレゼントを贈るわよ!」
ヴィオレッタは満面の笑みを見せた。
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