第4話

眼の前の世界が歪む。世界が壊れる。


(…この世界は幻だったのだろうか。)

「“いかにも”。」

(ーー!!)

「わしは魔王軍幹部『策士クアッド』。そなたの“幻”、壊しに来た。ソナタの村を破壊したのもこの私だ。」(殺す!殺してやる!)「そう怒るでない。“真剣勝負”、しようじゃあないか。」

現れたのはイカ型の怪物だった。


シュタッ!!

ーーその間は1秒にもみたない。

早く鋭い一撃はクアッドを掠る。

(…こいつ!!強い!!)

「ハッハッハッッ!!“いかにもぉ”!!」


「お前本当にイカなのかよ。このタコ」

荒々しい言葉遣い。無駄に澄んでいる蒼眼。王様と比にならない凛々しい顔立ち。


「ーーあなたは!」


ーーすかさず俺は叫ぶ。

帰ってきたのは。


「ッッッはぁ?てめえがタコじゃボケぇ」


音速を超える速さで帰ってきた鋭い言葉という名の弾。“針”より鋭い言葉を使う彼こそ「若き閃光『勇者ハリベル』」。


「何で早く殺んねんだよ。」

(お前が馬鹿だよ!!こいつ殺したら幻まで消えるだろ!!そしたら王様死んじゃうじゃねーかよ!!)

「そなたがそんな事を考えていたとは。ーー!!素晴らしいことを考えたぞ。王様を開放しよう。それ!!」

「う、うう。わしはなにを。」

「今楽にしてやる!」


眼の前に血が広がる。


シュ!


「やもやだ。さすが若き閃光。」


おれは言う。


「ーーは?」


「まだ分かってないのか下っ端。おれが“いかにも”それっぽく考えていたこと。」


とおれ。

ハリベルは続ける。


「で、あとは『若き閃光』のおれが殺る。お前全然策士じゃないな。ーーいや、策士策におぼれる、ってか。」

「な、なぜ!!わしは幹部なのに!!」

「言ってることも矛盾してるしやってることもアホじゃから。こりゃしかたないかもの。」


と王様。


「お前は黙ってろ!!」

「“そう怒るでない”ぞ。」

「許さんぞ!!必ずぅ!必ず魔王様はお前たちをころ…ぐふっ。」


終わった。タコがザコでよかった。ーーいやイカか。とにかくまぁよかった。っていうかアイツは決してザコではないかもしれない。戦い方をもう一捻りでも二捻りでもーー。されたら負けてたな。


一方。●●●●●●●●●に存在する魔王城。

「タコが負けた、だと?」

「魔王様、イカです。自意識の高い。」

「コ、コホン。ま、まぁ決戦の時は近づいている。死なないように、な。」

(「それはあなたが、ですよ。」)

因縁渦巻く覇王の住処。ーー決戦の時は近い。

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魔迷宮物語 米良像真 @pisarozari

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