ここは?

第2話



 視界が真っ白になって、果てのない水平線の向こうがいつの間にか小さくなっていた。


 操縦桿を握る手が震えていた。


 地上から飛び立った時には感じなかった感覚が、身体中に駆け巡っていた。


 まるで何もかもが消えていくような感覚だった。


 ゴーグルの向こう側に途切れていく空が、——少しずつ溶けて、沈んでいくような。



 そうだ。


 昔に見たことがある。


 …あれは確か、子供の頃の記憶だ。


 何も考えてなかったあの頃、無我夢中に足を動かした街の向こうで、空を穿つようなサイレンが聞こえた。


 夕暮れ時の空が赤く燃え上がり、木の柱の先に伸びていく電線が、麦の実る田んぼの向こうへと続いていた。


 不思議と息切れはしなかった。


 自分の家がどこにあるのかも忘れて、夢中で走った。


 山、坂道、川のほとり、汽車のシルエット。


 一体どこまで行けばいいのか、わからなかった。


 それくらい無心だった。


 バタバタと土を蹴る足の音が、耳鳴りのように響いていた。


 線路の向こう側に海が見えて、街が沈んでいた。


 それをどう言えばいいんだろうか。


 海の中に浸かった地面が、世界の全てを覆っている。



 ——そんな、印象の…

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