君と出会った日の空は

「ねぇねぇママ〜」

「は〜い?」

「ママとパパの馴れ初めってやつは何〜?」

「急にどうしたの?」

ママは目を丸くし少し頬を赤らめた。

「本を読んでたら出てきて〜。ママたちはどうなのかなぁって」

「パパが帰ってきたら聞いてみて。ママにも教えてね」

「なんで〜教えてよ〜」

「だーめ。パパに聞いてみて?」

「……わかった!」

全然教えてくれそうにないのでパパの帰りを待つことにした……とは言っても帰ってくるまでにまだまだ時間があるので冬休みの課題を少しでも進めて最近はまった恋愛小説の続きを読んで過ごした。

「ただいま〜」

「「おかえり!」」

「おぉ……珍しいね。澄夏すみかまで迎えてくれるなんて。何かあったの?」

「えっとね〜ママとパパの馴れ初めを知りたいの!」

そういうとパパもきょとんとした顔をして笑って

「ママに聞かなかったの?」

「ん〜?私忘れちゃったなぁ」

そう言いながらママはキッチンに戻り料理の支度を再開する。

「じゃあお風呂とご飯を済ませたら教えてあげるよ」

「え〜?……わかった」

そういいパパはお風呂に向かって私はキッチンに向かい料理の支度を手伝い家族みんなで食事を終えてママは洗い物を始める。

「ねぇ教えてよー!」

テレビをつけたパパを呼ぶ。

「わかったよ」

そういいパパはテレビから目線を外し私の方を見て

「ママとはね……」

「うん……!」

「公園で……空を見てたら出会ったんだ!」

「……え?」

「公園で空を見たんだ!」

「それはわかったよ!」

パパは至って真剣な眼差しで2回繰り返して私に強く訴えた。

「それだけ?!」

「そうだよ?一緒に空を見て付き合って気づいたら澄夏が中学生に……」

「え〜なんだ〜」

「なんだって言われるとちょっと悲しいなぁ」

もっとロマンチックなそれこそどこかの学園恋愛のような長い恋バナを想像していたのに実際はものすごく単純だったことに少しガッカリした。

「澄夏?その時の澄んだ景色はすごい綺麗でママもそれを見にきててね?」

「うん」

「思わず一緒にみませんか?って誘ってしまったんだ」

「……ナンパ?」

「え……あぁ〜そうかも?」

「えぇ意外!」

「全部話してあげるよ。せっかくだからさ」

「長い?」

「短いと思うよ。まだ続きだからさ」

娘に若干?いや、かなり引かれながらも彼は当時の記憶を想起する。

そして、忘れかけていたあの空の下で佇む彼女のことも。

どこか雰囲気が妻に似ているあの女性……今は何をしているのだろうか。

そんなふうに彼はもしかしたらという空想の旅を始めた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学校サボった日の空は 色音 @sikine_0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ