Every
ナナシリア
Every
中学校や高校では、運動部にしろ、文化部にしろ、ほとんどの生徒にそれぞれの青春というものがある。
部活に所属していない碧人にとっても例外ではなく、彼の青春は、青春への憧れという形で表れた。
「こんな青春が、羨ましい」
彼は、物語に描かれるような青春に憧れていた。
空調の効いた廊下に立った碧人は、無意識といった様子で運動部たちが活動しているグラウンドの方へ視線をずらした。
そこでは、星の数ほどの運動部員が活動をしていたが、碧人の視線は一点へと注がれていた。
彼は青春をちょうど味わっているところだというのに青春が羨ましいなどと言っているのだ。
そんなこともつゆ知らず、碧人の視線の先にいる彼女は練習に励んでいた。
それは果たしてなにか大きな目標を持っているのか、惰性的なものなのか、碧人にはわからないが、紛れもない青春だった。
彼女は碧人に特別な感情は抱いていなかったが、どちらかといえば好意を感じていた。だがそれも、練習中の彼女には関係のないことだ。
彼女の目標は、市内大会を勝ち抜き県大会に出場すること。そして、そこで出来るだけ勝ち抜くこと。
彼女は必死で練習した。自分たちのために指導してくれる人たちの力を借りながらも、自分の力で戦うために。
碧人は彼女とこの場では意思疎通が出来なくても、彼女が練習に打ち込む姿からそれを感じ取って、心の中で応援を告げた。
戦いの土俵に立つことすらしなかった自分を省みながら、空調の効いた廊下を立ち去った。
そんな彼を、見つめる少女がいた。
碧人は間違いなく、青春の真ん中にいた。
少女は友達がいなかった。そんな中、碧人は彼女に話しかけた。
彼女はそれがとても嬉しくて、その日から碧人の姿を目で追ってしまっていた。
「でも、わたしが話しかけても仕方がないよね……」
彼女は自分に自信がなかった。碧人に話しかける勇気もなかった。
彼女は碧人が立ち去ったのを見て、ついそのあとを追いかけた。
碧人と少女の視線が交錯した。
Every ナナシリア @nanasi20090127
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