崇高な理念と、それを成し遂げる力。二つが合わさったときに、悲劇は起きる

やや内向的な主人公、琴子は美しい友人、睡蓮に憧れていた。
不思議な力を持つ睡蓮は人を遠ざけるところがあったが、琴子には気を許しておりそれがまた琴子を喜ばせた。
しかし二人が所属するクラスには陰湿な虐めがあり、それが彼女たちの関係に影を落とす。

「この世から虐めをひとつのこらずなくしたい」という考えを持つ睡蓮は、虐めの矛先が変わったとき、自身の理念の実現に向けた行動を始める。

睡蓮に対して友情以上の想いを抱く琴子は、そんな彼女を放っておくことができず……

睡蓮がもつ理念は、本来であれば叶えることが難しいものです。しかし、彼女は不幸にもそれを叶えうる力を持っています。それでもまだ、実行に移すことはためらわれていましたが、琴子という大切な存在ができてしまったことで実力を行使し、それがかえって琴子の胸を痛める結果になります。

琴子と睡蓮、二人が互いに抱く想いは痛々しく、相手のためなら自ら傷を背負うこともいとわないという危うさを秘めています。その不安定さは物語の終盤まで続き、読み手に不安を抱かせます。

ホラー作品にはいろいろな怖がらせ方のバリエーションがありますが、本作の怖さの源になっているのはこのメインキャラ二人の「危うい関係性」にあると感じます。相手を想うあまり、人の道を外れてしまうのではないか。どこまでも堕ちてしまうのではないか。その不安感が続きを読ませる原動力に繋がっています。

少女たちの危うくも美しい関係性に浸りたい方は、是非お読みください。

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