合鍵
連喜
第1話 美人女子大生から合い鍵を貰う
俺の目の前には超かわいい女子大生の女の子が立っている。白いモヘアみたいなセーターを着ていて、にっこりと微笑む。顔はテレビのアナウンサーみたいに完璧な美人で、スタイルも抜群だ。服を着ている時だけじゃなくて、そうじゃない時もすごいっていうのを俺は知っている。
俺は、最近付き合い始めたその子の部屋に遊びに行って、楽しい週末の夜を過ごしたばかりだった。今日は日曜日。そろそろ夜の10時だけど、彼女が好き過ぎて帰りたくなかった。
「君を連れて帰りたい」俺は彼女の腰に腕を絡める。
「うふ。甘えんぼなんだからぁ。じゃあ、合鍵持ってって」
「えっ?マジでいいの?」
予想もしなかった展開に俺は鼻血が出そうだった。
「うん。こんなの初めてだけど、江田ちゃんは特別」
特別。俺は真っ赤になる。特別という言葉に弱いのは主婦だけじゃないだろう。
俺はもう一度彼女を強く抱きしめて、キスをした。
「これからは好きな時に来ていいんだよ。いつでも待ってる」
ぱっちりした目をしばたたかせながら、俺の背中を抱いた。
この子はすごいな。
魔性だと俺は思った。
***
俺はもう五十を過ぎている。普通の中年男がどうやってそんな完璧な美女を射止めたのかと言うと、きっかけはマッチングアプリだった。マッチングアプリっていうのはすごい。タレントの新山千春が利用してたと言うのは有名だけど、他にも梅宮アンナ、はるな愛なども利用していて、実際に交際したことがあるそうだ。結城るみなという学習院大学出身のAV女優は、マッチングアプリを利用して出会った人から覚醒剤を勧められて使用を始めたと告白している。つまり、出会いに不自由しない極上の美女たちが、スマホの向こうで待っているということなのだ。
俺の彼女はあさひという名前なのだが、現在有名私大の二年生で、キー局のアナウンサー志望だった。今時、テレビ局なんてオワコンだと思うのだが、就職先としてはいまだに人気があるようだ。しかも、アナウンサーになるなんて、ほぼ不可能ではないかと思うが、本人は自分が美人だという自覚があるようで、本気で狙っているようだった。
俺はマスコミ志望じゃなかったから、業界のことは知らないが、実際に大学の先輩でアナウンサーになった人がいる。また、顔を知っているくらいのほぼつながりのない人が、テレビ局のプロデューサーとかになっている。他にも仕事でテレビ局の人に会ったことはある。しかし、俺が知っているのは制作の人ではないのだが、彼女にそういう話をすると、俺がテレビ局にコネがあると勘違いしたようだった。
それに、俺が彼女の気を引くために色々買い与えているうちに、俺のことを金持ちだと錯覚していた。彼女は若いせいもあり世間知らずだった。
もし、彼女が東京の人だったら、俺が普通のサラリーマンだということがわかっただろう。しかし、地方出身で親が地方の中小企業の社員だったから、大企業に勤めているだけで高給取りだと思ったようだった。俺が〇〇区に一戸建てと賃貸マンションを所有していると話すと、明らかに目の色が変わった。俺みたいなのは、東京では金持ちとは言わないのだが。
彼女が銀座でホステスのバイトでもすれば、本当の金持ちがどんなものかわかっただろうと思う。ばれたら内定取り消しだろうけど。
俺はずっと心苦しかったが、詐欺をやっている訳じゃないし、この関係も彼女が俺が大したことないと気が付くまでだと思っていた。
俺が帰り電車に乗っている間も、Lineが届いた。
『次会えるまでさみちい( •ॢ◡-ॢ)-♡』
かわいい。
可愛すぎる。
食べてしまいたい…。
俺は思った。
鍵を持ってるんだし。
サプライズで明日、家に行こうと…。
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