第2話 サプライズ
俺は早速月曜日の夜、あさひの家に行くことに決めた。仕事の後に合鍵であさひの部屋に入って待っていて、びっくりさせてやろう。
しかし、そんなことをして喜ぶか、ちょっと不安だった。
俺とあさひは毎日Lineをしている。俺から連絡するだけなく、あちらからも来る。最近の若い子はLineは滅多に使わないみたいだから、俺がアカウントを知っているということは、ガチカップルと言っていいだろう。
あさひは月曜日は予定がないということで、あちらが家に帰ったら、Line電話で話す約束をしていた。
あさひは本気で俺のことが好きらしかった。もともと、物凄く年の離れた人が好きだそうで、高校時代に好きだったのは、学校の先生だったそうだ。その人は四十代で子どももいる既婚者だったから、告白はしなかったとか。
前にこんなことを言っていたっけ。
「今思うと(その先生は)全然かっこよくなかったんだけど、その時はすごく好きだったの。ふふ」微笑みながら遠い目をする。彼女の高校時代はつい最近だ。制服姿はさぞかわいかっただろう。女子校だったのに校内にファンクラブがあったそうだ。一般人にファンクラブなんてと思うが、テレビに出ている人は基本そんな人ばっかりだろうし、特に珍しくないのかもしれない。
「私、お父さんとすごく仲が良くて、お父さんみたいな人と結婚したいってずっと思ってたの。江田ちゃんはお父さんにちょっと顔が似てる」
「え、まじで?」
親と仲がいいって、なんていい子なんだと俺は感動した。
ちなみに、父親の写真を見てみたけど、まったく俺に似ていなかった。しかし、娘がこれだけ美人なのだから、父親も整った顔立ちをしていたが。年齢は俺より三歳くらい下だった。
「お父さん、俺のこと反対しないかな」俺は弱気になった。
「まさか!しないよ!やだー。そんなの心配しないで大丈夫。江田ちゃんだったら、すごく喜んでくれると思うんだ。私、まだ、彼氏を親に紹介したことないから」
俺は彼女の言葉を信じることにした。反対云々の前に、俺たちはすぐ破局するだろうと思っていた。そうなったら本当に悲しい。彼女と別れるくらいなら、片腕がなくなった方がましだった。
あさひは本当に素晴らしい女性だった。人の懐にすっと入って来る人懐っこさ。何時間見てても飽きない美しい顔。透明感のある笑い声。頭はちょっと悪いけど、俺が面接官なら即採用したいくらいの逸材だった。
俺はあさひにプロポーズしたかったけど、彼女がOKするはずがない。これからアナウンサーになって、有名になる筈なのに、俺がいたら邪魔だろう。
断られてもいいから、俺は今年のクリスマス、あさひにプロポーズしようと決めていた。
***
俺は部屋で、大好きな彼女の帰りを待っていた。一応、手土産に人気店のケーキを買っておいた。昼休みに店に行って、代金を支払っておいたのだ。夕方だと売り切れてしまうかもしれないからだ。
彼女は何でも喜んでくれる。田舎の人だから、ブランド物も、人気店のお菓子や食事も珍しいようだった。俺が地方から都会に出て来た時は似たようなものだった。訛りもあって話すのが恥ずかしかった。彼女もちょっと訛っている。それがかわいい。アナウンサーになるのにマイナスではないのか。俺にはわからない。
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