第7話
今日はいつもより早く起きた。その理由は昨日早退したという美咲が気になっていたからだ。体調はもう大丈夫みたいで、迎えに来ると言うから今日は早起きした。7時45分よりも前にドアを開けると、既に美咲はいた。
「あ、おはよう美咲!」
「おはよう。偶然だね、私もいま来たところで」
「それより体調悪くなって帰ったって聞いてびっくりしたよ。大丈夫だった?」
「うん、一日休んだら元気になったよ」
という割にはなんだか、やつれているような気がする。気のせいだろうか。
「大丈夫? 元気がないように見えるけど」
「ちょっと寝不足かな。あんまり寝れなくて」
「え、なんで? 体調が悪くなったら、寝て元気にならないと」
「家帰って寝ちゃったから、夜寝れなくて夜更かししたんだよね。ほら、中間テストも近いから」
「なるほど」
そう言って2人で歩いていると、見知った顔がスマホを触って立っていた。
「一条さん? おはよう。どうしたのこんなところで」
「楓ちゃんと、美咲ちゃんと一緒に歩きたいな〜って思って。おはよう二人共」
「……おはよう」
「ふふっ」
彼女は随分と嬉しそうな顔で笑うので驚いた。
「どうかしたの?」
「いや、まさか貴方から挨拶されるなんて」
「…………別に」
「へえ、昨日の一件で仲良くなったんだ。良かった。一条さんが美咲のこと連れて行ってくれたんだっけ?」
「そうそう。仲良くなって。仲良く、ね?」
『仲良く』その言葉に二人は反応したのか、美咲は気まずそうに顔をそらし、反対に一条さんは更に嬉しそうにするのだった。
……なにはともあれ、二人が仲良そうなら、私も嬉しい。
「そういえば! そろそろテストだね、美咲は大丈夫だとして……一条さんはどんな感じ?」
「それより、しのちゃんじゃない?」
「アタシは勉強しなくても大丈夫。蓄積もあるから」
「へえ……いいなあ」
「ていうか、楓ちゃん勉強出来ないんだ。アタシが教えてあげよっか?」
「それは、私が教えるから。口出ししないで」
「あはっ。そう、ざーんねん」
やっぱり仲は悪いみたいだ。正直一条さんに教えられても困る部分があるから助かったと言えば助かったんだけど……。
「それより楓ちゃんさ、一条さんって言うの止めない? 距離があるみたいで嫌なの」
「うーん、でも私達って距離があるものじゃない?」
「ええ〜酷いねえ? 美咲ちゃん」
「名字で呼ばれてるだけ嬉しいと思ったら?」
「…………」
すると大きくため息をついて彼女は一言。
「二人といてもつまんない」
それはそれは、申し訳ないことをした。
「じゃあさ、楓ちゃんはいつ血を飲ませてくれるの?」
「出来ればない方が嬉しいかな?」
「えー私達吸血鬼は血を飲まないと人を襲っちゃうんだよ?」
「ええ……じゃあ……」
「それなら、ちゃんと支給されてるはずでしょ。しのちゃんの血なんていらないでしょ」
「だって美味しいんだもん。楓ちゃんの血。貴方と違って」
「え? 美咲の血を飲んだの?」
それは、いつ? 体育の時? ぐったりとした美咲を保健室に連れて行ったのを友達が見たとは聞いたけど、その時に?
ドクンドクンと心拍数が高鳴る。それは、物凄く嫌だ。だってそれは殆ど抵抗できないような状態じゃないか。
「しのちゃんったら、飲まれたわけないでしょ」
「でも美咲、体調悪かったんでしょ? その時に……知らないうちに……っ?」
「仮に体調不良者なら、そんな人の血なんて飲まないわよ。万が一何かあったら、疑われるのは私だし。人間と共存できない吸血鬼なんて奴隷にされちゃうわ。あと不味いし飲みたくもない」
「な、ならよかった。ごめんなさい、疑っちゃって」
「別に。疑うことは大切よ。確信がないまま生きてもきりがないもの」
優しいんだなと思った。美咲のことになると頭に血が上ってしまったから、少し気をつけないとなと苦笑した。
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