スーパーカブに初めて乗った話
沢谷 暖日
スーパーカブに初めて乗った話
大学2年生の秋。
一人暮らしの私は、念願のスーパーカブ50を納車した。
本当はイエローが良かったけれど、どうやら現行カラーからは無くなってしまったのでベージュにしてみた。最初こそは少し残念だったのだけど、それでも実際に見てみると私はすぐにベージュカラーが気に入った。
それは写真で見るよりも何倍も綺麗で可愛くてかっこよかったのである。
そして早速運転。
その際私は衝撃を受けた。
ギアチェンジ時には車体がガクンとなるし、発進時は思ったよりも威勢がいい。
けれどそれ以上に、見える世界に色が付いた気がした。それに私は酷く衝撃を受けた。
アパートに辿り着いた私は、それまでずっと目星を付けていた坂道に向かった。
その坂は歩こうとすれば体力を奪われ、自転車で行っても同様で、行きたくても中々足が向かない場所だった。
夕日が照らす坂道を、私はカブで駆け上がる。通り過ぎてしまった青春が肌を撫でるようで、なんだか無性に楽しくなる。
坂の頂上までは一瞬だった。
カブを道脇に停めて、写真を撮ってみる。
スマホのカメラでの撮影は、目に見える景色をどうしても伝えきれなくて、だからこそこれでもいいかと思えてくる。後ろ髪を引かれるような思いになりながら坂を降りて、そしてやっぱりもう一度坂を登った。
同じ景色を目におさめ、今度こそ私は坂を降りる。眩しい夕日に目を細めながら、それでもしっかり前を見て、家へ向かう。
思わず歌を口ずさむ。
今までバイクに乗りながら歌ってる人は見たことがあったけれど、その人たちの気持ちが今、なんとなく分かった気がした。
このカブは、明日はどこへ連れて行ってくれるのだろう。
追記
帰りの自販機でじっくりコトコトを購入。
カブでゆっくりトコトコ帰宅した。
スーパーカブに初めて乗った話 沢谷 暖日 @atataka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます