別れた元カノがうちのメイドになった件
雨宮桜桃
第1章
別れた元カノがうちのメイドになった件〈上〉
僕・
人生で初めてできた大切な彼女だ。
彼女の名前は
腰ぐらいまで伸びた長く綺麗な金髪が彼女のトレードマーク。
整った容姿と特質したコミュニケーション能力で1年の時はクラス女子の中心的存在だった。
それに加え努力家で僕なんかにはもったいないほどよくできた彼女だ。…………そう、僕にはもったいないほど。
高校1年の春休みが終わり、今日は始業式だった。
みんな始業式が終わるとさっさと帰っていく中、僕は校舎の一番奥の外階段に腰を掛けて人が来るのを待っていた。
10分ほど待っていると一人の女子生徒がこちらに向かって歩いてきた。彼女――水無瀬紗弥だ。
「ごめん、おまたせ」
「いや、全然待ってないから」
一ヶ月ぶりに会う彼女は今日も今日とて可愛い。ほんと僕なんかにはもったいないと思うほどに。
「大事な話って何? 私この後バイトあるから早めに済ませてもらえると嬉しいかも」
「ああ、大切な話っていうのは……僕と別れてほしい」
「……え?」
これが一度も会わなかった春休み、一ヶ月で出した僕の答えだ。
水無瀬さんは驚いた様子で固まってしまっている。
「な、なんで――どうしてっ」
動揺する彼女に一言
「ごめん――」
と、だけ言って僕はその場を立ち去った。
つらい決断だった。けれどこれが今後の彼女のためになると自分に言い聞かせて家までの帰路を走る。
家に着いた頃には目元の涙も乾いてた。
「……ただいま……」
母さんに帰ってきたことを知らせるが返事はない。買い物にでも行っているのだろうか。
リビングに入り、明かりを点けるとテーブルの上に1枚の紙が置かれており、それを手に取って目を通す。
「なになに――浩介へ。父さんいきなりフランスに転勤が決まってな。母さんと2人でフランスに引っ越すことになった。でもお前1人じゃ心配だからメイドを雇うことにした。住み込みで働いてもらうから仲良くな。父さんより」
…………
「……は? どうゆうこと?」
フランスに転勤? メイド?
いきなりのことが多すぎて理解が追い付かない。
「つまり今日から一人暮らしでメイドが僕の面倒を見るってこと? 住み込みで?」
今度は理解した上で言おう。
「どうゆうことやねーん!」
そんなこんなしているとピーンポーンと呼び鈴がリビングに響き渡る。
メイドの人が来たのか?
僕はインターホンに移動し「はい」と警戒しながらマイクに返事する。
「あっ……今日からここで住み込みでお世話をさせていただくメイドの者です」
やはり父さんが雇ったメイドだ。
カメラでは顔を確認できなかったが声はどこかで聞いたことのあるような……。
とにかくこのままインターホンで対応し続けるのはいかがなものか。
「今出ますんで」
僕は玄関に行き、ドアを開く。
「すいません。お待たせしました」
「初めまして。本日から働かせていただく
ドアの向こうから現れたのはさっき別れたばかりの元カノ・水無瀬紗弥だった。
「なんで水無瀬さんが僕のうちに……」
「どうしてバイト先に天海くんが……」
玄関先で固まる僕たち。
そう、この日別れた元カノがうちにメイドとしてやってきた。
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