ファンタジー要素はありつつも等身大の悩みや葛藤を丁寧に描いた作品

 特に印象的だったのは、天が振る舞いや身なりを学んでいく姿勢です。戸惑いながらも前向きに努力する姿が微笑ましく、応援したくなりました。ファッションや化粧など、普段あまり意識していなかったことにも目を向け、真摯に向き合う天の姿に好感が持てます。

 また、同じ学部の南との出会いも良いエピソードでした。天の悩みを察して、柔らかな言葉をかける南の存在が、天にとって心強い味方になりそうです。二人の友情の行方も楽しみです。

 天が「自分らしさ」について思索するくだりは、性別の垣根を越えて誰もが共感できるメッセージ性を感じました。男女というカテゴリーにとらわれず、今の自分に素直に生きることの大切さを伝えているようで素敵だと思います。

 ファンタジー要素はありつつも等身大の悩みや葛藤を丁寧に描いた作品だと感じました。軽快な文体ながらも温かみがあり、これからの天の成長と活躍が楽しみになる物語でした。