第14話 結び

 眞田が管理人さんを殺したんだ。きっとそうだと俺は思っていた。 


 しかし、自〇だったらしい。

 管理人さんの遺体のポケットに遺書が入っていたそうだ。


「入居者の皆さんに嫌われていることを知りショックでした。ずっと楽しくやって来たつもりでしたが、幻だったようです。生きていく気力をうしないました」


 そして、入居者一同の名前が入った手紙が一緒に見つかった。シェアハウスと管理人さんに対する苦情が書き連ねられていたそうだ。ワープロの文書で、最後に入居者の署名があったそうだ。そこには、あの女の名前だけなかった。管理人さんは女だけを信用するようになったのだと思う。


 女は陰では悪口を言いながら、管理人さんに近づいていたようだ。女の腹黒さには、ただ、呆れるばかりだ。女は多分、管理人さんを心理的に孤立させて、自分の意のままに操りたかったのだろう。入居者の選定にも口を出していたらしい。


 しかし、最終的に管理人さんは、自分の世界に退避してしまっただけだった。


 もっと普段から会話の機会を持っていればこんなことにはならなかったに違いない。口下手で不器用な変人ばかりを集めたせいで、変な方向に進んでしまったのだろう。しかし、俺には無理だったし、他の人も同じだと思う。


 なぜ、入居者は男ばかりで女はいなかったのか。

 女の人が入居しても、しばらくすると、退去してしまうと聞いたことがあった。

 もしかしたら、あの女が何か吹き込んでいたのかもしれない。

 例えばこんな感じで。


「前に住んでいた人から聞いたんだけど、管理人さんが風呂を覗いてたって!」

「管理人さんが合いかぎで勝手に部屋に入ってたみたいなんです」

「私も下着がなくなったことがあって」

「Xさんって、前科があるんですって。しかも、痴漢の!」


 あのおばさんは、アナタハンの女王バチになりたかったのか。

 

 狭い社会と空間。


 ひしめき合う、口のきけない男たちの中に、一人だけの女。


 もしかしたら…俺以外の入居者たちは、全員おばさんと関係があったのかもしれない…そう気が付いてはっとした。

 

 原始的な集合体みたいだ。


 世界のどこかに一妻多夫のコミュニティもあるそうだ。

 ごく稀に。


***


一妻多夫が見られるのは、 経済的に貧しい地域である。すなわち1人の女性とその子供を1人の男性の経済力によって養うことが非常に難しく、複数の男性で支えることにより女性の生活と子供の成長を保証できる。


 江戸時代の江戸においては人口比が圧倒的に男性が多く、町人においては結婚できる者が限られていた。そのため、長屋の住人は1人の女性が長屋の他の男性とも関係しており、実質的な一妻多夫制によって町内の連帯が保たれていたという説がある(Wikipedia)


***

 

 こういう女性が好きな方は、サンクチュアリ〇〇というシェアハウスがお勧めだ。女は今もそこに住んでいると聞く。ほかの入居者がどうなっているかは知らないけど。しかし、残念ながら女性は入居できないようだ。


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