王にならなかった「王子」と王になれなかった王子、二人の運命は

作家にとって、世襲制のもつジレンマ――世継ぎがいなければ存続できず、世継ぎが多すぎれば後継者争いの種になる――は絶好の題材である。おとぎ話からお家騒動まで、実に多彩なバリエーションが存在する中でも、一度王制をリセットする「革命」が王位継承者の運命を翻弄する話は、実は割と難しかったりする(王位を追われた王族が玉座を奪還するのとは異なり、戻るべき玉座はもう無いのだ)。何度かそのネタで短編をものしようとした自分が言うんだから多分間違いない。
しかしこの作品は、世襲制の持つ王位継承のルールにもてあそばれ、革命という歴史の衝撃に翻弄された王族の数奇な運命を、聞き手と語り手、二人の男女のやり取りで描き出した格調高い逸品である。短編なのですぐに読めるが、読み終えた後はしばらく余韻に浸れるので、今すぐ作品をクリックして存分にこの世界を味わおう。