愛は人を生かしも殺しもする。フランス革命を舞台に描かれた美し過ぎる物語

フランス革命をモチーフにした物語は数多くありますが、本作はその傑作の一つと呼んで惜しくないでしょう。
薄絹のベールのように滑らかな、かつ艶めいた筆致。静かなモノローグは読む者を幻惑の縁へ誘います。
愛は人を生かしも殺しもする。それはなんと残酷で、幸せなことでしょうか。

物語の主軸は何と言っても聖女フランソワ……その情熱で王座を焼き払った男勝りの麗人の薔薇が散る様にも似た生き様にありますが、拝読後、私の胸にあるのは、激動の時代を生き抜き、その生の意味をようやく見つけたアンリとその同居人……彼ら二人への祈りです。彼らの平穏が、どうぞこの物語の中だけでも永遠であって欲しいと望むばかりです。