第2話 きっとこれが堕落の始まり。

 なんだかんだ言って中学校は卒業した、というか義務教育なんだからさせられる。グループ内でごたごたしているうちにそんな時期になったり、不登校になって内申点が足りなかったり。高校の見学に行きたく無くて母ちゃんにおにぎりを投げつけたのは似合い思い出だ。

 そんな母ちゃんはめげずに高校を探してくれて、私立の高校に入学。いじめられていた子や、何かしら心に問題を抱えている子が多いらしい。境遇の似ている者たちの集まり。言っちゃ悪いが学力はもちろん、コミュニケーション能力や運動神経といった何かしらの問題が抱えた子が多い学校だった。結論から言うと超楽しかったのだが、スペックだけで語るのであれば「底」であった。


 入学当初、とんでもなく卑屈な男が一人いた。まあ僕なんですけど。斜に構えていて、皆が友達を作ろうとワイワイ喋っている中一人淡々と授業や休み時間を過ごす。

 そんな女がもう一人いた。後の元カノである。


 クラスでグループが固まり始める六月ごろ、僕にもその子にも周囲に数人集まるようになっていた。決して一軍という訳ではないが数人友達が出来ただけマシかと思っていた矢先の転機だった。思いもよらぬ一言をかけられた事で僕の人生は180°変わることになる。


 「lineやってるやんな、交換しよう?」と後ろから声をかけたのは件の彼女である。色恋なんかはもちろん女友達なんていなかった僕にはハードルが高すぎた。「いやスマホ壊れてるねん、すまん。」陰キャ丸出しである。

 こんな回答にめげずに「スマホ直った?」と毎日のように聞いてくるもんだから、ついつい交換してしまった。それから数日後の放課後。

 「ちょっと話あるねんけど、廊下来れる?」と一通のline。人生で初めて心臓の音を感じた。クラスの中でも1、2を争う位可愛い女の子からの呼び出し、緊張しない訳が無い。


 「ずっと気になってました、うちと付き合ったください。」と。人伝てに好意は聞いていたが思い当たる節が無いから返答に数秒の間が空いてしまった。

 「いやどこがいいねん俺の、顔も声も性格も。」

 「目。」


 目かぁ、、、初めて言われたなぁ、、、意味わかんね、、、。自分の全てに自信が無かったもんだから、鳩が豆鉄砲喰らった顔ってものを人生で初めて廊下の鏡越しに自分の顔で見た。

 「付き合ってくれるならこのままギュってして。」と手を伸ばす彼女、もちろん人生初めてのハグである。この子意外と男慣れしてるビッチなのかな、それとも大胆なだけなのかな、なんて考えているうちに僕の体は彼女に吸い込まれていた。心も体も素直である。小学校入学して以来の人とのハグだったと記憶している。とても暖かく、安らぎを知った。


 この日を境にいわゆる「リア充」街道まっしぐらだった。自分に自信が持てるようになったおかげか、クラスの中心に立つようになり。気が付けば斜に構えてイキっていた男がまさかのリーダー格の一軍である。


 きっとこれが堕落の始まり。

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孤大妄躁 くぼさん @kubosun

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