第三十一話 ガラリア王国建国祭、開始!

 王都中に毒薬をばらまこうとかいう、随分とイカれた事を計画していやがった野郎どもを潰した後も、俺とフェリスは当日騒ぎに乗じて悪さをしそうなゴミ集団を片っ端から潰して行った。

 スラム街から始まった犯罪者組織ぶっ潰し計画も、いつの間にか王都全体にまで広がり、最終的には59か所の犯罪組織を潰すことに成功した。

 そして、1週間が経った今日――


「これより、建国163年目を祝う、ガラリア王国建国祭を開催することを、宣言する!」


 拡声器によって、王都中に広がる国王の言葉。

 直後、湧き上がる歓声。

 こうして、今日より3日間続く建国祭が始まるのであった。


「いや~遂に始まったな~」


「ですね~今日の為に頑張りましたから」


 国王のありがた~いお言葉を聞いた俺は、フェリスとそう言って笑い合う。

 フェリスには、ここ1週間頑張らせちゃったからね。

 助けた人に心無いこと言われ、傷心してしまうというハプニングに見舞われたこともあったが、頑張って励まし、やり抜いたんだ。

 どうやって励ましたのかは、ちょっと恥ずかしいので、盛大に省くとしよう。

 ああ、勿論あ~んなことや、そ~んなことは、していないから大丈夫だ!


「さて……と。どこから行くか?」


 俺は喧騒とした大通りを歩きながら、フェリスに問いかける。

 王城まで一直線に続くこの大通りには、出店が多数立ち並んでおり、至る所にガラリア王国の国章旗が掲げられていた。

 如何にも建国祭って感じがしていいね。

 すると、フェリスがやや遠慮がちにしながらも、1つの出店を指差す。


「まずは、あちらで飲み物を買いませんか?」


「おけおけ。金はたんまりとあるから、こういう時ぐらい散財するか」


 そう言って、俺はじゃらりと硬貨を鳴らす。

 建国祭に向けて、俺とフェリスが行った犯罪組織の殲滅。その副産物として手に入ったのが、組織を潰すことで手に入る大量の金だ。

 しょぼい所も当然あるが、中々貯めている所もあり、最終的に1221万セルもの大金を手にしたのだ。

 ただ、流石にそんな額の銅貨や銀貨をじゃらじゃらと持ち歩くことは出来ない為、有名どころの商会に赴いて、1枚100万セルになる金貨に両替して貰った。

 お陰で懐もスッキリだ。

 ああ、勿論銅貨や銀貨もある程度持っているから、飲み物を買う為に金貨1枚を出さないといけない……なんていう出店泣かせの所業はしなくて済む。


「すみませ~ん。2杯ください」


 そう言って、俺は店頭に掲げられている値段通り、小銅貨6枚を手渡す。

 つまり、1杯300セル。

 まあ、相場よりもちょっと高い。お祭り価格ってやつだ。

 だが、そんなのどこも同じだし、折角の祭りでそんな事考えていたらつまらない。


「は~い。どうぞ!」


 いかにも町娘って風貌の少女は、笑みを浮かべて硬貨を受け取ると、木製コップの中に紅茶色の飲み物を注いでいく。

 そして、俺に「はい、どうぞ」と笑みを浮かべながら手渡してくれた。


「よし。はい、フェリス」


「ありがとうございます」


 俺は受け取った飲み物の片方を、フェリスに手渡す。


「さて、どんな味かな……?」


 そう言って、ゴクリと飲む。

 ……なるほど。薄めの紅茶って感じかな。

 やや冷たくて、喉越しも悪くない。


「……はぁ。さ~て、周りに何があるかな?」


 道の隅で、壁に寄りかかりながら、俺は辺りを見回す。

 ただ、ここって使い捨てのプラスチックコップみたいな便利グッズが無い関係上、飲みながら歩く……ってことが出来ないんだよね。

 コップは、ちゃんと返さないと。返さなくても、こんな喧騒とした世界では気づかれないだろうが……この場合、別に返さなくても店側は損しないんだよね

 何故なら、飲み終わったコップを返すと、その際に100セルが返金されるようになっているのだ。昔、牛乳の空き瓶を返したら、金が一部返って来たというあれと同じ。

 つまり、あの金額には木製コップ代もセットになっているのだ。

 すると、フェリスが口を開く。


「レオスさん。この先にある料理店では、建国祭限定のスイーツを出しているらしいですよ。早めに行って、並んだ方が良いかと思います!」


 頬を綻ばせ、声を弾ませながら、フェリスは前方を指差す。

 へ~限定スイーツか。

 限定って言われると、無性に興味が出てくる現象って、何て言うんだろ?

 と、よく分からない疑問を頭に浮かべつつ、俺はゴクリと喉を鳴らすと、口を開いた。


「だね。ま~ちゃんとこれを味わってから、行こうか」


 今急いで言ったところで、大して変わらない。

 そう思った俺は、そう言ってやや逸り気味のフェリスを優しく宥める。

 すると、自身のはしゃぎように気付いたのか、途端に恥ずかしそうに顔を赤くし、視線を落とす。


「そ、そうですね。分かりました……」


 そう言って、ちびちびとコップに口を付ける。

 なんか、小動物みたいで可愛いな……

 そんな事を思い、思わず微笑しながら、俺もコップに口を付け、喉を潤していく。


「……ふぅ。それじゃ、コップを返してくるよ」


「ありがとうございます」


「気にすんな」


 自身のと、フェリスのカップを持ち、俺は再び店の方へ行くと、先ほどの少女にカップを返す。


「ありがとうございま~す。こちら、返金です」


 すると、その分の代金、小銅貨2枚が返金された。

 それを受け取り、懐に入れると、俺はフェリスの下へ戻った。


「よし。それじゃあ、フェリスが言ってた所に行ってみるか」


「はい、分かりました!」


 そうして、俺たちは次の所へ向かって歩き出すのであった。

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ゲーム世界に転生した俺は、転職を繰り返しながら自由に生きる 〜あ、主人公たちがピンチだ。でも目立ちたくないし、陰ながら助けるか〜 ゆーき@書籍発売中 @yuuuki1217

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