※お知らせ※第28話【絶望の夢】心配の姉(1)
夢を見ている。
色鮮やかな閃光に目を灼かれる。
超音速で吹っ飛んでいく黒い剣ナンバー20が、同じく超音速で追撃する四機の魔導鎧に追い詰められていく。
遥か遠くには巨大な船群があり、上へ上へと上昇している。
=ナンバー20! お前が一番の不確定要素だ。墜とさせてもらうぞ!
=私たちは宇宙へ行きたいだけなの! 邪魔しないで!
=破壊する……破壊。
=GHQの戦力を除いた最上位の戦力を集めた! ここがお前の墓場だ!
それぞれが好き勝手言っている魔導鎧達を気にすること無く、黒い剣は最短距離を突っ切っていく。
――そして。
□黒剣起動! ターゲットを破壊!□
ひたすら空へと突き進んでいた巨船の先頭一隻を闇色の砲撃で撃沈した。
=なんということを! 移民船には守るべき一般人が乗っていたのよ!?
「守るべき? 違うな。天秤から勝手に落ちる者は既に守るべき者では無い」
=何を言って!? っ!
=奴らか、面倒なことになった。
激高する一機の魔導鎧が仕掛ける特攻気味の近接攻撃を人型と成り軽くいなしたナンバー20は、巨船が爆発しながら空を歪めるのを睨んで舌打ちした。
とんでもない光景に戦いの狂気に陥っていた魔導鎧使いすら、天を見つめて固まっている。
ゆがんだ空は六角形の構造物として次々と剥がれ落ち、その奥の闇に紅い輝きが二つ光り、そこから真っ黒な触手が降り注ぐ。
=ふっふざけっ!
=嫌ああああっ!
=破壊……はっ!
=これが真実っ!
次々と雨のような触手に削り取られていく魔導鎧達。
最初に撃沈された巨船以外も次々と餌食になっていく。
「貴重な戦力だったが、俺以外は全滅か。記憶洗浄の申請は無駄になったな」
ナンバー20は空間を侵食するような黒い触手の群れを最低限切り開きながら、触手を回避しつつ嘆息する。
□GHQからの新たな指令です。再閉鎖までの時間を稼いでください□
「了解!」
新たな指令を受けたナンバー20は人型から黒い剣に成ると、砕けた空から見下ろす真っ赤な双眼へ触手の群れをかき分けながら突っ込んでいった。
意識が浮かび上がってくる。
絶望的な夢を見た。
空が偽物?
その奥には化け物が居る?
変な悪夢を見たと笑い飛ばしたいところだが、ローズという証人もいるからナンバー関連の夢は過去に起こったことなのだろう。
これは流石に後で聞いてみるべきか……。
さて、今は夢のことより、目の前の状況を優先するべきだ。
「クロ、大丈夫?」
「大丈夫だよ。おねえちゃん」
まずは緑の目を潤ませて心配してくれるおねえちゃんを安心させなければ。
どうやら魔導車のシートで眠っていたみたいで、横でおねえちゃんが手を握ってくれている。俺が目覚めたので車内が騒がしくなってきた。
車内は広いけど仕切りがあるわけではないので、何かが起きればすぐに分かってしまうのだ。
俺は大丈夫だ。
最初に撃沈した船に心は痛むが、ナンバー20が何もしなくても空に突っ込んで同じ事になっていただろう。奴の言っていた天秤から勝手に落ちる者という言葉の意味が、何となく理解できる。
恐らくは、ナンバー20の威で何も知らずに自殺しようとする人々を止めようとしていたのだろう。結果はあんな事になったけど、状況的に仕方が無かったと思う。
視界の端でシャルロットがローズに叱られている。
何故かお嬢様は下着姿だが、努めて無視だ。足元に寝間着らしきものが転がっているので、理由は分からないが脱ぎ捨ててしまったのだろう。大空からの落下中で生きるか死ぬかの時にキスを仕掛けてきたお嬢様の考えは、ちょっとよく分からない。
海外の国家特有の文化なのだろうか……?
――お知らせ――
皆さんお久しぶりです!
久々の更新ですがお知らせがあります。
この『強すぎるおねえちゃんと開拓!』ですが、このお話で完結にさせていただきまして、実験的に元々の連載である『強すぎるおねえちゃんと一緒!』の方に少しずつ移した後に連載を再開しようと思っています。
今作の一話が七十三話になる感じです。
まだお嬢様の活躍を描写できていませんし、火山のダンジョンや雪山のダンジョンといった他のダンジョンも残っているので、まだ書くことはいっぱい有ったりするのですが、実験のために合流しようと思います。
合流後は続きを書いていこうと考えていますので、もし良ければお付き合いください。急に申し訳ないです。
――あとがき――
心配の姉(2)で書く予定だったのでネタばらししてしまいますが、空の怪物はレベルアップで全滅していたりします。(笑)
レベルアップという大きく世界のルールを変更する事象は、空の化け物を滅ぼしてしまいました。
環境が変わりすぎるとヤバい存在でも生き残れないのです。
強すぎるおねえちゃんと開拓! ランドリ🐦💨 @rangbird
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます