運命に立ち向かった女性たちから、どうか目を逸らさないで。

錬金術師の家庭で育ったマリア。平穏だった彼女の生活は、ある夜に一変する。オスタネス伯爵家が扇動する錬金術師狩りに遭い、弟は殺され、両親は投獄。マリアは民衆を唆したバルバリに捕らえられ、彼の弟ハレルヤの花嫁として街から外れた森の奥へと幽閉されてしまう。
家族を引き裂いた男の弟とどうして愛を育めようか。そう思っていたマリアの心は、ハレルヤの無償の献身で徐々にほぐれていく。市民革命のごたごたは森とは無縁だし、嫌味なメイドもいるが生活に不自由はない。紆余曲折を経て新しい命を授かることもでき、このまま静かな幸せが続くものだと思っていたのだが――。


物語は手紙の朗読から始まります。時間軸としては本編よりもだいぶ後のことです。過去を回想しながら徐々に別れへ向かう手紙の主が誰なのか、それがわかった時に思わず頭皮を掻きむしりました。そして、運命というにはあまりに困難続きだった女性たちのやるせなさに胸が痛みます。女性の幸せって、何なんでしょうね。

望まぬ不幸に追いやられた時、あなたならどうしますか?

抗いますか? 諦めて全てを受け入れますか? 復讐しますか?
その時に戦える力がなかったらどうしますか? 万人に愛されるような素晴らしい容姿をしていなかったらどうしますか? 困難の中でも愛してくれる人が現れたら、困難の中で生きていきますか?

きっと、その立場になってみないとわかりません。そして誰もが物語のヒロインのように聡明で美しく気高いわけではありません。等身大で、それでも懸命に生きようとすればするほど、困難の壁は高く感じます。私は彼女たちの結末を飲み込むまでもう少し時間がかかりそうです。それでももがき続けた女性たちの物語が、ぜひ多くの人の目に留まってほしいと願っています。