ふたつのわら人形

三夜間円

プロローグ

 初めまして。

 この物語の水先案内人役の保科茜ほしなあかねと申します。以後、お見知りおきを。


 さて、みなさんは『人をのろわば穴二つ』という言葉を耳にしたことがありますか?


 ネットで調べてみたところ、他人を呪って殺そうとすれば、自分もそのむくいで殺されることになるので、墓穴はかあながふたつ必要になる。つまり、人をおとしいれようとすれば自分にも悪いことが起こるというたとえだそうです。


 しかしですよ――は思うのです。


 本当にそうなのでしょうか。他人を呪い殺したいと思うほどうらみのねんが強い人の多くは、被害者であると同時に弱者でもあります。そんな人間が必ずリスクを背負わなければならないというのはおかしなことだとは思いませんか? 一方で、加害者である強者はたとえ人を陥れたとしても自分に悪いことが起こるとは限らない。世の中とは実に不公平にできているものなのです。だからこそ、わたしは――。


 今回のお話しは、ふたつのわら人形を使った呪いの話です。


 呪いを実行するためには情報収集に膨大な時間をついやし、計り知れない精神力と体力が消費されます。だからこそ、呪いの対象はひとりに限定されるのです。それにも関わらず、神社の御神木ごしんぼくにはふたつのわら人形が五寸くぎで打ち付けられることになります。


 ――果たしてその理由とは? そして主人公である黒瀬くろせリンに平穏な日常はやってくるのでしょうか――?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る